住宅ローン控除とは
マイホームを購入して、住宅ローンを組んだ人に対して、一定の条件を満たしている場合、所得税が減額されます。
さらに、所得税から引ききれなかった控除額があり、一定の条件を満たしている場合、住民税が減額されます。
住宅に関する控除には様々な種類がありますが、住民税の控除の対象となるものは「住宅借入金等特別控除」のみです。
(対象外となる例:特定増改築等住宅借入金等特別控除、住宅特定改修特別控除、認定住宅新築等特別控除、など)
今回は、住宅関係の控除の中でも一番有名な「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」について解説します。
住宅関係の控除一覧
制度名 | 住宅ローン | 取得・改築 | 住民税控除 |
---|---|---|---|
住宅借入金等特別控除 | 必要(10年以上) | ・住宅の新築、新築住宅の購入 ・認定住宅の新築、新築認定住宅の購入 ・中古住宅の購入 ・増改築等の実施 (増改築・建築基準法上の大規模改修、または模様替、マンションリフォーム等、耐震改修工事、バリアフリー改修工事、省エネ改修工事) | 〇 |
特定増改築等住宅借入金等特別控除 | 必要(5年以上) | ・省エネ改修工事等の実施 ・バリアフリー改修工事等の実施 ・特定多世帯同居改修工事等の実施 ・特定の省エネ工事と併せて行う特定耐久性向上改修工事等 | × |
住宅特定改修特別控除 | 不要 | ・省エネ改修工事等の実施 ・バリアフリー改修工事等の実施 ・特定多世帯同居改修工事等の実施 ・耐震改修工事、省エネ改修工事と併せて行う耐久性向上改修工事等の実施 | × |
認定住宅新築等特別控除 | 不要 | ・認定住宅の新築、陳地区の認定住宅の購入 | × |
住宅耐震改修特別控除 | 不要 | ・耐震改修工事の実施 | × |
所得税の減額(控除)
所得税から控除される額は↓のとおり計算されます。
控除額=住宅ローン年末残高の合計額×1%(100円未満切り捨て)
要するに、ローン残高によって税金を減額してもらえる、ということです。
ただし、いろいろと条件があります。
ポイント1:控除できる額は上限がある
控除額には上限があり、上限額は住宅の内容や、取得した時の消費税率によって変わります。
例えば、消費税8%のときに認定住宅に該当するようにマイホームを建てた場合、控除の上限額は50万円となります。
また、消費税5%のときに認定住宅に該当しない(一般住宅)を建てた場合は、上限額は20万円となります。
(認定になるかどうかは、住宅を建てたり買ったりするときに業者さんから教えてもらえると思います。)
なので、いくら住宅ローンがいっぱい残っていたとしても、控除できる上限があるので注意です。
住宅区分 | 控除上限額 |
---|---|
一般、消費税5% | 20万円 |
一般、消費税8%・10% | 40万円 |
認定、消費税5% | 30万円 |
認定、消費税8%・10% | 50万円 |
ポイント2:共有名義のローンだと年末残高が減る
夫婦や親子などの共有名義で住宅ローンを組んでいる人は持分比率によって住宅ローンの年末残高が計算されます。
例えば、夫婦で5,000万円の住宅ローンを組んでいたとして、夫と妻の持分が6:4の場合、夫は3,000万円、妻は2,000万円の住宅ローンが残っていることになります。
なので、夫は最大でも30万円、妻は20万円までしか控除が適用されないことになります。
ポイント3:補助金や親からの援助をもらったら・・・
住宅関係の補助金は、国や市区町村からのものがちょくちょくあります。すまい給付金は有名ですね。
自分が対象になっているならありがたくもらっておけばいいのですが、住宅ローン控除の計算をするときのローン残高から差し引く必要があります。(それでも補助金もらった方がトクですよ♪)
また、住宅関係で親などから住宅資金として援助を受けた場合は、高額になることが多いので贈与税の対象になることがあります。
でも、住宅関係の贈与の場合は贈与税がかからない特例がありますので、それを利用する人が多いと思います。(贈与税はマジで高いです。)
だがしかし、この特例を使ってしまうと、その贈与分の資金はローン残高より差し引いて計算することになります。(二重減税は禁止みたいです。)
ポイント4:そもそも所得税が少ない人には・・・
所得が低かったり、控除が多い人は所得税があまりかかっていません。
そもそも、この住宅ローン控除は税金を減額してもらえる制度なので、税金をあまり納めていない人にとってはメリットも少なくなります。
例えば、共有名義で住宅ローンを組んでいるパートナーが仕事を辞めたり、育休に入って休職したりすると、所得が発生しませんので税金がかかりません。
そうなると、せっかくの住宅ローン控除が使えなくなってしまいます。
なので、税金があまりかかっていない人が、住宅ローン控除をあてにしてマイホームを建てたりすることはキケンかなぁと思います。
ポイント5:引っ越ししたり所得増えすぎたときは適用外
意外な落とし穴の一つですが、マイホーム建てた→転勤で引っ越し→空き家…となってしまうと控除が受けられなくなります。
控除を受けるためには「その住宅に住んでいること」が条件の一つになります。
よって、マイホームを建てた後に転勤になったので、親(知人など)が代わりに住んだとしても控除は受けれません。(ただ、貸家にして不動産収入を得る、という方法で稼げるかもしれませんね♪)
あと、ほとんどの人は対象外でしょうが、合計所得金額が3,000万円を超える年は控除の対象外となります。
所得3,000万円以上で住宅ローン控除がある人は、ある程度所得を調整できるのであれば3,000万円以下に抑えることも一つの節税になります。
住民税の減額(控除)
住宅ローン控除は所得税だけではなく、住民税からも控除してもらえます。
ただ、住民税からの控除は、所得税で引ききれなかった控除額が余っていれば控除しますよ、という考え方になります。
なので、本来かかっている所得税より住宅ローン控除の方が少なくて、控除の余りがない人は住民税からの控除はありませんのでご注意を。(残ってる控除額の救済措置っていう感じです。)
住民税からの控除の要件
- 所得税の住宅ローン控除を受けていて、控除しきれない控除額があるとき。
- 平成21年~令和3年までの間に居住しているとき。
住民税からの控除額
次の1,2のいずれか小さい金額が住民税からの控除額となります。
- 前年の所得税の住宅ローン控除可能額のうち、所得税において控除しきれなかった額
- (前年の所得税の課税総所得金額等×7%) ※上限 136,500円
2.について、平成26年3月以前に入居されているとき(要するに消費税5%の場合)は所得×5%分で、上限は97,500円となります。
特別特定取得について
消費税率が10%になるときに作られた住宅ローン控除の追加控除。
住宅の取得等の対価の額、または費用の額に含まれる消費税率が10%であり、R1.10.1~R2.12.31の間に居住した場合に該当します。
通常の控除適用年数が10年に対し、11~13年目も控除が適用できることがメリット。
1~10年までは通常と同じ控除額ですが11年目以降の控除額は↓のとおり。(かなり少ない控除額なのでオマケ程度。)
区分 | 控除限度額(1,2いずれか少ない方、100円未満切捨) |
---|---|
認定住宅 | 1. 認定特別特定住宅借入金等の年末残高×1% 2. 認定住宅の新築等で特別特定取得に該当するものに係る対価の額の税抜価格(5,000万円を限度)×2%÷3 |
それ以外 | 1. 特別特定住宅借入金等の年末残高×1% 2. 住宅の新築等で特別特定取得に該当するものに係る対価の額の税抜価格(4,000万円を限度)×2%÷3 |
控除の受け方(申告する方法)
控除を受けるには以下の2つの方法があります。
- 確定申告する
- 年末調整のときに申告する(会社員のみ)
ただし、年末調整するときも初回は確定申告する必要があります。
ちなみに、確定申告や年末調整をすることで、所得税だけでなく住民税の申告もしたことになりますので、住民税申告をする必要はありません。
確定申告する(初めて控除を受ける人は必須)
必要な書類を集めよう
まず、申告に必要な書類を用意します。
初めて住宅ローン控除の確定申告するときは必要書類がたくさんありますが、2回目以降は簡単です。
初回? | 必要な書類 |
---|---|
初めて | 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 住宅の登記事項証明書など 住宅の売買契約書や工事請負契約書など 土地の登記事項証明書など ※土地購入の場合のみ 土地の売買契約書など ※土地購入の場合のみ 長期優良住宅建築等計画の認定通知書 の写し ※認定住宅に該当のみ 住宅用家屋証明書 (写し可)、または 認定長期優良住宅建築証明書 ※認定住宅に該当のみ |
2回目~ | 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書 ※給与所得者で希望者のみ |
<ポイント>
- 住宅を取得するときに土地も含めて購入したときは、土地に関する書類(登記事項証明書・売買契約書)が必要です。
- 認定長期優良住宅や認定低炭素住宅に該当する場合は、通常の書類に追加して書類が必要になります。
- 会社員(給与所得者)の人は2回目から会社の年末調整で申告できます。
確定申告書を作ろう
必要な書類が揃ったら、確定申告書を作成します。
住宅を取得して住み始めた翌年以降に確定申告することになります。
確定申告書を作るのは、国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーで作るのが一番カンタン&確実です。
はじめは難しく感じるかもしれませんが、国のサイトにしては珍しく丁寧に解説してくれているので、自分が用意している書類を見ながら入力していくだけでカンタンに作れちゃいます。
YouTubeの動画解説でもわかりやすく教えてくれていますので、参考にしてみてください。
(↓の動画は申告書を作成して書面で提出する方法です。)
ちなみに、確定申告は申告期限内(3/15まで)にしてね、ってアナウンスしていますが、住宅ローン控除の申告の場合はほぼ100%所得税を返してもらう申告(還付申告)になるので、期限内にゼッタイする必要はありません。
むしろ、書き方がわかんないとかで税務署に聞いたりしたいことがあっても超混雑しているときではマトモに相手にしてくれません。
期限後になって申告してもデメリットは全くありませんので、焦らず正確に申告しましょう。
(急いで間違えた申告になる方が後々メンドイです。)
年末調整で申告する(給与所得者で2年目以降)
会社員(給与所得者)は会社で年末調整をしてくれますので、そのときに住宅ローン控除を合わせて申告することで確定申告しなくてもよくなります。
初めて確定申告するときに「翌年分以降に年末調整又は確定申告でこの控除を受ける際に利用する書類が必要ですか?」という質問に「はい」と回答していれば、後日税務署より「住宅借入金等特別控除申告書」がまとめて送られてきていると思います。
2年目以降は、送られてきた申告書に記入して、住宅ローン会社からの年末残高等証明書と合わせて会社の年末調整のときに提出すれば申告OKです。
書くときにミスしやすいのは、共有名義で購入しているときは住宅ローン年末残高の額が変わりますので注意が必要です。
(間違えて申告してるとあとで税務署から追徴させられます…)
この申告書の書き方もYoutube(国税庁動画チャンネル)にありましたので貼っときます。
まとめ
- マイホームを手に入れたら住宅ローン控除の申告は必須!
- ローンがなくても控除してくれる制度もある。(該当するかは要確認)
- 認定住宅に該当させるかどうかは、自分の所得や共有あるかどうかでも検討。
- 共有名義で建てるときは、今後の人生プランも考えて…。
- 確定申告は所得税の納付の申告でなければいつでもOK(申告する年から5年以内ならOK)
- 住民税の控除は所得税から控除しききれない余りの控除分だけ。(上限あり)