1.退職金の制度
退職金とは、退職するときに会社からもらえるお金のことです。
もらう側からすると残念なお知らせですが、退職金を支払うことは企業の自由(義務ではない)ため、退職金が支給されない場合もあります。
ちなみに、退職金制度を実施している企業割合は約80%のようです。
(厚生労働省:平成30年就労条件総合調査 結果の概況より)
また、元々は終身雇用を前提として作られた制度のため、それがなくなりつつある現代では退職金の支給額も徐々に減っています。
2.退職金の受け取り方は3種類(一括・前払い・年金)
一時金(一括)で受け取る
退職時に現金一括でもらう方法です。
退職金をもらうときにイメージするのはコレでしょう。
一時金で受け取ると、税の減額制度が充実していることで他の所得に比べて税金がかかりにくいところも嬉しいポイント。
年金形式で受け取る
一括して退職金を支給するのではなく、退職金を一生涯や一定期間にかけて分配してもらう方法です。
(企業年金とも呼ばれています。)
大企業はこの制度を取り入れていることが多いです。
また、↑の一時金制度と併用する企業も多いです。
年金 | メリット | デメリット |
---|---|---|
企業 | ・一度にまとめて高額な賃金を支払わなくて済む ・社会保険料の負担軽減になる場合がある ・福利厚生のアピールになる | ・導入、運営にコストがかかる ・従業員向けに投資、情報教育が必要 |
従業員 | ・年金額が上乗せされるので安心感がプラス ・税控除のいいとこ取りができる(人による) | ・退職金が少ない場合は一括の方が税負担が少ない ・住宅ローンの返済中の人はアテにできない ・資産運用が上手な人は一括でもらった方が効率的 |
前払いで受け取る
前払いとは、退職時に退職金をもらうのではなく、在職時の給与やボーナスに退職金分を上乗せしてもらう方法です。
前払い制度を採用している企業は約5%程度のようです。
(内閣官房:民間企業における退職給付制度の実態に関する調査・研究より)
企業・従業員にとってメリットが多いので、働き方改革・法整備が進めば採用する企業が増える可能性もあります。
前払い | メリット | デメリット |
---|---|---|
企業 | ・退職給付引当金を計上しなくてよい ・求人広告で給与が高いアピールができる | ・社会保険の負担が増える ・懲戒解雇した人にも退職金を支給したことになる |
従業員 | ・月給が増える(退職金を先に使える) ・退職金を減らされるリスクを回避できる | ・税の減額措置が受けられない (退職金扱いで受け取ると税金の減額制度がある) |
3.退職金の相場
退職金は勤続年数、退職理由、退職時の基本給などさまざまな条件によってかわります。
国の資料(厚生労働省:平成30年就労条件総合調査 結果の概況)より、勤続20年以上で45才以上の退職者に給付した平均額は↓のとおりです。
<学歴別:定年退職者の平均退職金額>
- 大学・大学院卒(管理・事務・技術職):約1,900万円
- 高校卒(管理・事務・技術職):約1,600万円
- 高校卒(現業職):1,100万円
日本は古き良き(!?)年功序列、学歴社会がまだ残っているため、基本的には高学歴・事務職・勤続年数が多い人が退職金が高くなる傾向があります。
4.退職金はいろんな要因で変わる
(1) 学歴・職種
学歴…わかりやすくいうと基本給です。
いろいろな学歴や職種の人が働いて会社に貢献しているわけですが、カンタンにいうと「その人が会社にどれだけの利益をもたらしたか」によってその慰労を兼ねて支給されるのが退職金と考えれるといいです。
カタチではなかなか見えない成果・利益を「見える化」したものが基本給なのです。
ちなみに、退職金の計算イメージは↓のような感じです。
退職金=基本給×勤続年数×退職理由×α ←実際の計算方法ではありません^^;
よって、基本給が少ないと必然的に退職金も少なくなります。
基本給は、一般的に学歴が高いほど多くなるので、高校卒より大学・大学院卒の方が初期ランクが高い位置付けとなって、退職時までにその差を埋めることはキビシイです。
(会社の人事評価制度や成果主義方式などによっては問題ないところもあります。)
また、現場職のような職種より、管理部門・事務職などの方が退職金が高い傾向があるようです。
(注意)わかりやすさ重視で「基本給」という表現をしていますが、当然基本給だけで決まっているものではありません。
(2) 勤続年数
退職金の金額を決める大きな要因の一つが、勤続年数です。
単純に勤続年数が長い人は、(実態はそうではなくても…)その分会社に貢献したと見えるためですね。
勤続年数 | 支給額(大卒) | 支給額(高卒) | 支給額(高卒・現業) |
---|---|---|---|
20~24年 | 1,200万円 | 500万円 | 400万円 |
25~29年 | 1,300万円 | 700万円 | 600万円 |
30~34年 | 1,700万円 | 900万円 | 800万円 |
35年以上 | 2,100万円 | 1,900万円 | 1,600万円 |
このように、勤続年数が増えれば増えるほど支給額も増えていきます。
また、勤続年数が35年以上になると大きく増える、という傾向があるので「会社辞めたいなぁ」と思っている人は、辞める前に自分が勤務している会社の退職金の規定は一読しておきましょう。
(使える制度は使わないと損しちゃいますよ。)
(3) 退職理由
退職理由とは、定年・自己都合・会社都合・早期優遇の4つがあります。
一般的に、退職金が高い順では、早期優遇>会社都合>定年>自己都合となります。
退職理由 | 支給額(大卒) | 支給額(高卒) | 支給額(高卒・現業) |
---|---|---|---|
定年 | 1,900万円 | 1,600万円 | 1,100万円 |
自己都合 | 1,500万円 | 1,000万円 | 600万円 |
会社都合 | 2,100万円 | 1,900万円 | 1,100万円 |
早期優遇 | 2,300万円 | 2,000万円 | 1,400万円 |
注意点として、すべての企業の退職金が該当するわけではありませんので、勤務先の退職金規定を確認してみてください。
(4) 計算方法
退職金の計算方法は3つあります。
<年功型>
勤続年数に比例して退職金が上がっていく昔ながらのタイプです。
大抵の企業や公務員はこのタイプです。
計算方法は単純に勤続年数に合わせて退職金が増えていくような計算方法となっています。
<成果報酬型>
会社への貢献度によって退職金を決めるタイプです。
「高い目標を達成した」「売上を伸ばした(成果を出した)」「重要な役職に就いた」といった要件で退職金の額が決められますので、社員のモチベーション維持にもなります。
最近は成果報酬型が増え始めていて、特にベンチャー企業や営業職では取り入れられていることが多いです。
<ポイント制>
年功型と成果報酬型を組み合わせたタイプです。
勤続年数、資格等級、役職などの貢献度を評価できるポイントを設定して、それをクリアした従業員にポイントが付与され、そのポイント数によって退職金を決める、という方法です。
現状、成果報酬型を取り入れるのにハードルが高いと思っている企業が、従業員の貢献度を正当に評価する制度としてこちらを採用する企業が増えています。
5.まとめ
【ひとこと】
まだまだ先の話と思っている退職金。
ある日突然会社をクビになったり、会社がイヤになって転職を考える日も来るかもしれません。
今現在いくら退職金がもらえるのか、〇歳まで働いたらいくらもらえるのか、などライフプランを考える上で知っておく必要アリですよ。
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