日本の個別株に投資している個人投資家であれば、株主優待に期待している人が多いと思います。
今回は、株主優待のメリット・デメリットを企業・個人投資家・機関投資家のそれぞれの視点でみていくことにします。
配当と株主優待の違い
日本は海外に比べて配当が少ない代わりに株主優待が多いという特徴があります。
そもそも配当と株主優待の違いは↓のとおり。
銀行で例えると、利息=配当、プレゼント=株主優待というイメージです。
配当:純利益に対しての数%を株主に還元する。(現金)
株主優待:株主へのプレゼント(商品)
株主優待を採用する企業のメリット・デメリット
2022年現在、株主優待を採用している上場企業は約1,460社あります。
メリット
企業側のメリットとしては3点ほどあります。
- 新規株主を増やせる
- 長期間株を保有してもらえる
- 自社製品のPRができる
1つめは新規株主を増やすことができる点です。
個人投資家は株主優待が大好きです。
そのため、魅力的な株主優待があれば、それを目的として株を購入してもらえるキッカケになることがあります。
また、さまざまなサイトや雑誌等で株主優待について取り上げていますので、自社のPRにもなります。
2つめは長期間株を保有してもらいやすくなる点です。
株主優待を目的として株を保有している人は、多少の株価の変動では株を売却することはありません。
そのため、安定的に株主を確保しておける、という点において企業にとってありがたい存在です。
また、そのような株主が多くいることで、株価が下がりにくくなることにもつながります。
3つめは自社製品のPRになる点です。
株主に自社製品や自社のサービス券などを採用して、それを気に入ってもらえれば株主=顧客につなげていくことができます。
例えば、小売店だと自社のクーポン券を配布したり、ホテル業だと割引券、製造業だと自社製品のサンプルセットといった感じです。
そのため、株主優待を単なる支出ではなく「広告宣伝費」という見方をすることも可能になります。
デメリット
もちろん、株主優待を採用することで企業側のデメリットもあります。
- コストが高い
- 株主優待をイヤがる投資家がいる
1つめは株主優待にかかるコストが高いことです。
少し考えればわかりますが、株主優待を採用するにはかなりコストがかかります。
例えば、自社製品の詰め合わせセット3,000円分を1万人の株主に送付すると考えると、単純計算で3億円がかかります。
それに加えて、送料や配送・問合せなどにかかる人件費なども考えると、それ以上にかかることになります。
逆に、配当を出す分には手間はかかりませんので、費用対効果(コスパ)を考えて採用する必要があります。
2つめは株主優待をイヤがる投資家がいることです。
↑のように株主優待には多額の費用がかかります。
そこまでのコストをかけて株主優待しなくても増配すればいいじゃないか、と考える投資家もいるのです。
また、株主優待は少額投資する個人投資家が一番のメリットがあり、大口投資している機関投資家にとっては旨みがありません。
例えば、1株1,000円の銘柄が100株で1,000円分の商品がもらえる優待があったとき、100株持っている人(10万円投資)の利回りは1%ですが、500株もっている人(50万円投資)の利回りは0.2%になってしまいます。
個人によるメリット・デメリット
株主優待で一番恩恵を受けることができるのは個人投資家(個人)です。
メリット
個人によるメリットは↓の2点です。
- もらう楽しさ・嬉しさがある
- 株の利回りが高くなる
1つめは単純に株主優待を選ぶ楽しさ、受けることによる嬉しさがあります。
普段は株主優待を意識していなくても、忘れた頃にある日突然商品が届けられたりすると嬉しいものです。
また、様々な株主優待のサービスがありますので、選ぶ楽しみもあるところがポイント。
投資の敷居を下げてくれるのに一役買ってくれているともいえます。
2つめは株の利回りが高くなることです。
10万円分の株を購入して、配当が4,000円もらえたら利回りは4%です。
しかし、それに加えて1,000円分のクオカードがもらえたら、合計5,000円分となり利回りは5%にupします。
これはかなりコスパがよくなりますので大きなメリットの一つです。
デメリット
逆にデメリットとなるのはこれです。
- 株主優待が廃止されるリスクがある
株主優待は企業側にもメリット・デメリットがあります。
そのため経営者や株主などの考え方が変われば株主優待を廃止する場合もあります。
有名どころとしてオリックスが2024.3.31を最後に株主優待を廃止すると発表して話題になっていました。
このように、株主優待は永遠に続くものではありません。
そのため、株主優待に過度な期待をしていると、思わぬ痛手を負ってしまう可能性がありますので注意が必要です。
仮に、株主優待が廃止されることになると、株価が下落するリスクがあったり、株を保有していることのよる利回りが減少することになります。
まぁ、逆に機関投資家の保有比率が高くなることにより、株価が上昇する可能性もありますので、必ず株価が下がることはありません。
また、前述したオリックスの場合、株主優待を止める代わりに配当に反映させるようですので、利回り的には変わらないかもしれません。
機関によるメリット・デメリット
最後に、機関投資家(機関)にとってはどうなるのでしょうか?
メリット
機関投資家にとっては直接的なメリットはあまりないと思われます。
機関投資家ではないのでわかりませんが…。
ただ、メリット言えそうなのが、個人投資家が増えることで株価が上昇してくれる、という点でしょう。
デメリット
デメリットとしては、投資対象である企業が株主優待にコストを支払っていることにより、企業全体の利益が少なくなり、その分配当が減ってしまう点にあると思います。
配当で還元してくれるならば機関は嬉しいでしょうが、株主優待で還元してもらっても投資に見合ったリターンが返ってこないため公平な利益還元がされていないと感じてしまうでしょう。
まとめ
それぞれの立場からみる株主優待のメリット・デメリットをまとめました。
立場 | メリット | デメリット |
---|---|---|
企業 | ・新規株主を増やせる ・長期間株を保有してもらえる ・自社製品のPRができる | ・コストが高い ・株主優待をイヤがる投資家がいる |
個人 | ・株の利回りが高くなる ・もらう楽しさ・嬉しさがある | ・株主優待が廃止される場合がある |
機関 | ・個人投資家が増えることによる株価上昇 | ・コスト増に伴う配当減少 (不公平な株主還元) |
こう見ると、株主配当は一長一短があり、どちらがいいとは言いにくいと思います。
個人的な見解でいうと、大企業はそれなりに機関投資家が集まっているため、公平な株主還元を行う意味もこめて株主優待がなくてもいいのかなぁと思います。
今後はオリックスをお手本として、他の起業も株主優待を廃止する動きが出てくる可能性はありますね。
しかし、機関投資家が入らない小型株などは自社製品・サービスのPRの広報宣伝を兼ねて株主優待を利用するのはアリなんじゃないかなぁと思います。
「これはいい商品(サービス)だ!」とバズって株価が急上昇していく可能性もありますし♪