はじめに|なぜ今テルマー湯を分析するのか
近年、個人投資家の間で「優待を楽しみながら気長に保有する銘柄」を求める動きが広がっています。
その中で注目されはじめているのが、都市型スパ「テルマー湯」を運営する テルマー湯ホールディングス(証券コード:3521) です。
2024年には 56年ぶりに配当を再開。
さらに2025年には食品事業を取り込み、企業として大きな転換点を迎えています。
しかし一方で、
- 小型株で値動きが軽い
- 店舗数が少なく依存度が高い
- 新規事業が本当に成功するのか
という不安材料もあります。
そこで本記事では、
- 最新の 半期報告書(第146期)
- 前期の 有価証券報告書(第145期)
この2つをもとに、客観的かつ多角的に分析します。
結論から言うと
テルマー湯は「長期保有は十分に検討可能だが、まだ過度な期待は禁物」
という評価になります。
理由は、このあと詳しく解説します。
1. 企業概要|テルマー湯HDとはどんな会社か
テルマー湯HDは元々繊維事業からスタートし、その後不動産事業へ転換。
現在の主力は、以下の3つです。
- 温浴事業(テルマー湯:新宿/西麻布)
- 不動産事業(エコナック西麻布ビル)
- 食品事業(2025年度より新規追加)
温浴事業では、
- 高単価帯
- 都市型スパ
- インバウンド需要あり
という独自ポジションを確立しています。
一般的な郊外型スーパー銭湯とはビジネスモデルが異なり、同業比較ではなく、都市型リラクゼーション市場に位置づけられます。
2. 最新決算(第146期半期)のポイント整理
まずは最新の業績から見ていきましょう。

売上推移は堅調
- 温浴事業は前年同期比で増収を維持
- 西麻布店が成長、新宿店は微減
コロナ回復後の需要は落ち着きつつも、全体としては底堅い動きです。
営業利益は黒字維持
温浴事業単体では安定した収益を確保しており、
本業が崩れているわけではありません。

3. 財務ポジション|強みと注意点
✅ 自己資本比率は驚異の 81.2%
これは上場企業でもトップクラスの財務健全性です。
つまり、倒れにくい会社であるということ。
借入依存も低く、外部ショックに強い構造です。
✅ 長期借入金は縮小傾向
前期→今期で借入金は大きく減少。
金利上昇の影響も限定的です。

4. 注意すべきポイント
① キャッシュフローの悪化
最新の半期報告書では、
- 営業キャッシュフローが減少
- 現金残高も大きく低下
原因は一時的なものが中心です。
- M&A資金支出
- 配当支払い
- 借入返済
つまり、事業悪化ではありません。
ただし、今後も同ペースで現金が減り続けると、財務余力が低下していく点には注意が必要です。
② のれん発生と利益圧迫
今回のM&Aにより 約20億円ののれん が計上されました。
これは以下の意味を持ちます。
- 今後 8年間にわたり毎期費用計上
- 利益が押し下げられる構造になる
- 減損が発生すれば株価に悪影響
現時点では減損リスクは高くありませんが、食品事業の成長が追いつかなければ懸念は残ります。
5. 新規事業(食品)の評価|可能性と現実
新規獲得した食品事業は、
- ペットフード
- 健康食品原料
- OEM供給
など、成長市場に属しています。
ただし現段階では利益貢献は小さく、半期実績では黒字は確保したものの、まだ“試運転”段階です。
将来性を評価するには、
- 通期黒字化
- 利益率向上
- シナジー創出
これらが確認できるまで、慎重に見る必要があります。
6. 温浴事業の競争力|セクター内での立ち位置
比較対象としてよく名前が挙がるのは 極楽湯ホールディングス(2340) ですが、両社はモデルが全く異なります。
| 観点 | テルマー湯 | 極楽湯 |
|---|---|---|
| 店舗数 | 2店舗 | 約40店舗 |
| 立地 | 都市型・高単価 | 郊外型・低単価 |
| 収益構造 | 付帯サービス比率高い | 回転率重視 |
| 財務状態 | 極めて健全 | 負債負担大きい |
結論としては…
テルマー湯は、ニッチ領域で競合優位を持つが、規模の裏付けがまだ弱い
つまり、目指す方向は悪くないが、結果が伴うのはこれから、という段階です。
7. 株価の下落リスクと将来性
株価の下落リスク
短期的には、少し下落する場面もあるかと思いますが、下値は堅く、大幅な急落が起こる可能性は低いと思います。
理由は以下のとおり。
【短期】やや下落しやすい可能性
- 営業CF悪化
- 減益見え方(実態は一時要因)
- 小型株で値動きが軽い
【中長期】下値は堅い
- 財務の強さ
- 本業の黒字維持
- 過剰投資リスクが低い
将来の株価上昇余地
今後、株価は上がっていく可能性は十分にあります。
しかし、このままの状態では急激な成長は見込めないため、ポジティブな変化が必要だと思います。
過度な上昇を期待する銘柄ではなく、育っていく企業を見守り、配当や優待をもらいながらのんびり投資する方がいいでしょう。
【上振れ条件】
- 食品事業の利益貢献が本格化
- 温浴の入館者数が安定成長に転じる
- 新規出店または追加M&A
- のれん減損リスクが低下
【期待値の現実ライン】
- 短期:横ばい〜弱含み
- 中長期:成長が確認されれば評価見直し
8. 配当・優待
この銘柄の一番のポイントが配当と株主優待です。
配当
1株あたりの配当は5円となっており、配当利回りは3.18%です。
3%を超えているため、十分な利回りが期待できます。
100株15,700円という手の出しやすい価格であり、利回り3%超えなので買いやすくていいですね。


株主優待
配当に加えて、株主優待も充実しています。
3月が権利確定月となっており、300株(47,100円)以上保有していると、テルマー湯の優待券が2枚もらえます。
平日のみの利用に限られますが、平日の非会員料金は2,900円ですので、5,800円分の価値がある優待となります。
お近くに住んでいる人は利用できますし、それ以外の人の場合はフリマサイトで売れば3,000円~4,000円程度にはなります。
そのため、優待の利回りは約7~10%程度は期待できます。
よって、配当と合わせると約10%以上の利回りがありますね♪

配当・優待の維持は期待できる?
このような大盤振る舞いに見える配当・優待ですが、今後も維持できるのでしょうか?
【ポジティブ材料】
- 自己資本比率が非常に高い
- 復配した=株主還元姿勢が変化
- 優待は現物型で負担が小さい
【ネガティブ材料】
- 営業CFが今後改善するかが最重要
- のれん償却が8年間続く
- まだ連続配当方針は明示されていない
結論:現時点では維持可能。ただし強固とは言えない段階。
9. 最終まとめ|テルマー湯に投資するなら
✅ 向いている投資家
- 優待を楽しみながら長期保有したい人
- 短期の値動きに振り回されない人
- 成長を“待てる”タイプの投資家
⚠️ 向かない投資家
- すぐに株価上昇を求める人
- 高い成長率を重視する人
- 小型株のボラティリティが苦手な人
注目するポイント
- 営業CFが回復するか(目安:200百万円台復帰)
- 温浴入館者数のトレンド(新宿店の反転が鍵)
- 食品事業の利益が継続黒字か
- 減損リスクの兆候がないか
- 配当方針が明確化されるか(DOE導入など)
テルマー湯は「守りが強いが、攻めはこれからの企業」
長期保有は十分検討できるが、焦らず数字を確認しながら付き合う銘柄
おわりに|情報に振り回されず、数字で判断する
小型株はニュースやSNSの声に影響されやすいものです。
しかし最終的に企業価値を決めるのは、
- 財務
- 事業の持続性
- キャッシュフロー
この3つに尽きます。
テルマー湯HDは、まだ成長過程の企業でありながら、財務基盤という強固な土台を持っています。
今後は、どれだけ実績を積み上げられるか。
その過程を見守りながら投資できる人にとって、魅力ある銘柄となる可能性があります。
参考文献
◆テルマー湯ホールディングス(IRのページ)
https://www.econach.co.jp/ir/library/
◆バフェット・コード(3521 テルマー湯のページ)
https://www.buffett-code.com/company/3521/
◆株探(3521 テルマー湯のページ)
https://kabutan.jp/stock/?code=3521
◆TradingView(無料で使える高機能チャート分析ツール)
https://jp.tradingview.com/?aff_id=127967