今回は、会社員が退職したときに請求される住民税について解説します。
なるべく専門用語は使いたくないのですが、今回はこの2つだけは使うことになりますので先に説明しておきます。
<用語解説>
特別徴収
…勤務先が、従業員の給与から住民税を差し引きして納める方法
普通徴収
…自分で、住民税を納付する方法
そもそも何で退職したら住民税の請求が来るの?
退職したら、役所から自宅に何か書類が届いたんだけど…。
え、これって住民税を払えってこと?
住民税って給与から天引きされてるんじゃないの?
って思われる方もいるかと思います。
疑問に回答する前に、給与から住民税が差し引かれる制度である「特別徴収」についてサクッと解説します。
特別徴収のしくみ
給与から住民税が差し引かれる特別徴収のしくみは↓のとおりです。
図解にすると↓のとおり。
<ポイント>
- 住民税は昨年中の所得等に対してかかるもの。(所得税は現在もらっている給与からかかるもの。)
- 年度は4月からだが、特別徴収は6月からスタートする。
- 1年分の税金から、残りの納期で割った額を納付する。(特別徴収はMAX12回、普通徴収はMAX4回)
例:令和3年度(2021年度)の住民税が年間12万円だった場合
住民税は、令和3年6月~令和4年5月の1年間で、年間の税額÷12ずつ給与から差し引くことになります。
つまり、12万円÷12=1万円となるので、月々1万円が給与から差し引かれるようになります。
6月からスタートして翌年の5月に終了する、というところがポイントです。
では、この場合で3月末に退職した場合はどうなるのでしょうか?
退職しない人は当然4,5月の給与がありますので、いつものとおり給与から差し引きされます。
これにより、1年分の住民税をすべて納めたことになります。
退職する人は、4,5月分の給与が発生しません。
ということは本来給与から差し引く予定だった2万円分はまだ納付していないことになります。
よって、自宅に残っている2万円分の請求が来ることになります。
ただし、特別徴収のルールの一つに「1月以降に退職する従業員の住民税は、最後の給与で残り全部引いといてね」というのがあります。
よって、3月末に退職する従業員がいる場合は、可能な限り3月の給与から1万円分だけ差し引くのではなく、4,5月分を含めた3万円分を差し引く必要があります。
よって、ちゃんとした勤務先であったり、明らかに3月分の給与が少ないといったことがなければ、退職前の最後の給与からまとめて住民税が差し引かれますので、自宅に請求が来ることは少ないと思います。
(勤務先の経理担当が忘れていたり、そもそもルールを知らない場合もありますが。)
一括で納めなきゃいけないときって?
3月末に退職したときで、最後の給与から住民税を引かれてないときであっても、請求が来るのは2ヵ月分なので支払は問題ないかと思います。
ただ、↓に該当するような場合は多額の住民税を一括で納めなきゃいけないときがあります。
- 11月~12月で退職したとき
- 勤務先が役所へ給与支払報告書の提出を怠っていたとき
- 勤務先のミスで住民税を給与から引いてなかったとき
11月以降に退職したとき
残りの住民税は約半年分残っています。(年12万円であれば6万円)
退職して特別徴収から自分で納付する方法に変更になるときは、あらかじめ決められた納期に合わせて納めていくようになります。
で、その納期というのが、6月・8月・10月・1月の末日の4回となります。
例えば、7月に退職したときは、納期がまだ3回残っているので「残っている住民税÷3」で分割して納めることができます。
が、11月に退職したときは、納期が1回(1月末)しか残っていないので、残っている住民税(約半年分)を1回で納めなきゃいけないことになり、負担増となるわけです。
勤務先が役所へ給与支払報告書の提出を怠っていたとき
そもそも、「給与を支払った場合は、1月1日時点で従業員が住んでいる市区町村の役所に1月末までに報告書を提出しなければいけない。」というルールがあります。(地方税法 第317条の6)
当然、大半の給与支払者(勤務先)はこのルールを守って報告書を役所に提出します。
役所は報告書などを基に住民税を決めることになります。
が、勤務先からの報告書がないと、最悪住民税の計算がされなくなり、役所から勤務先への連絡や従業員からの問い合わせで提出していないことに気が付く、なんてことがあります。
しかも、給与から天引きする特別徴収を会社がしてくれず、自分で納付しなきゃいけないパターンだと…わかりますよね。
1年分の住民税をまとめて納めなきゃいけないときがある、ということです。
給与から住民税を差し引きされていなかったとき
レアケースとして、勤務先のミスにより給与から住民税を差し引くのを忘れていたり、差し引いた住民税を役所に納めていなかった場合などがあります。
これは従業員が退職したときに本人宛に多額の住民税の請求が行くことで発覚したりします。
一括で納めなきゃいけないときの対処法は?
一括納付しなきゃいけなくなった。
でも、まとまったお金なんてないよー。
という人…残念ですが、基本的に税金からは逃れられません。
しかし、再就職の予定がある人は納める方法を変更できるかもしれません。
また、再就職の予定がない人でも、一度役所の住民税担当部署に相談してみるのも一つの手です。
分割納付や対象であれば減税などのアドバイスが受けれるかもしれません。
再就職した(する予定)の場合
前の会社を退職して、別の会社に再就職する場合は、再就職する会社に…
「住民税を給与から差し引きしていただけますか?」
などと確認してみてください。
会社から役所に手続きしてもらうことで、現在請求が来ている住民税を給与からの差引(特別徴収)に変更してもらえます。
これで、一括納付を回避できます♪
まぁ経理がしっかりしている会社では、こちらから聞かなくても就職時に聞いてくれると思います。
<注意点>
納期が過ぎている税金については、給与天引きに切り替えることはできないことが多いです。
住民税の請求が来たら、早めに対処しましょう。
役所の住民税担当部署に相談してみる
再就職の予定がない人は、役所の窓口で相談してみるのも一つの手です。
「一括でなんて払えねぇー。ムリムリ。」
って思って放置していると、どんどん状況は悪化してきます。
(督促状が届いて、延滞金がついて…強制執行)
そうならないためには、早めに手を打っておく必要があります。
担当のレベルによりますが、減税の方法を検討してくれたり、分割納付の相談を受けてくれたりすることがあります。
どうせ支払わなければならないものですが、どうしてもキビシイときは一度相談してみることをオススメします。
まとめ
- 住民税は前年中の所得とかに対する税金。(所得税と違い1年遅れで払ってるようなもの)
- 住民税の1年間の周期は6月~翌年5月。
- 年の途中で退職したら5月までに給与から差し引きする住民税が残ってるので請求がくる。
- 払えないからといって放置してるとヤバイ…面倒でも役所に相談しておいた方がいい。
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