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[ヤバイ]それは不動産の経費にしちゃダメなやつ…(根拠付)

不動産所得の経費
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お金持ちに必須の知識である税金についてサクッと学びましょう。
今回は「不動産の経費にできるもの・できないもの」を知っておきましょう。

なるべくカンタンでわかりやすく解説することを心がけています。
また、なぜそうなるのか?ということを裏付ける根拠も載せています。(税法付)

税理士や税務職員の皆様でも参考にできるようにしっかりと確認しておりますのでご参考ください。

不動産所得の計算って?

不動産の所得は↓の計算式で求めます。

不動産所得=不動産収入-必要経費 (所法26①)

今回は、この「必要経費」に焦点を絞って解説していきます。

必要経費とは…
その収入をもらうために使った支出(費用)のこと。

(例)クレープを売ったときの必要経費は、材料代・電気代・包装紙代など。

不動産の収入については↓で解説していますのでよろしければ。
[Q&A] コレって不動産所得になるの?(根拠付)

不動産収入にかかる経費

租税公課

不動産所得の経費でよくあるものの一つが租税公課です。

租税公課とは…
土地・建物などの固定資産税、事業税、消費税(税込経理方式のとき)、不動産取得税、登録免許税、印紙税などの税金のこと。
また、商工会・協同組合などの会費や組合費もOK。
もちろん、不動産収入に直結する部分のみが対象。

土地や建物を貸しているのであれば、最低でも固定資産税はかかっているので経費として申告することができます。

ただし、自宅兼店舗などのようにプライベートでも使っている場合は按分します。(所法45①一)

【按分(あんぶん)とは…】
基準の数量に比例して物を分ける、割り振ることです。

例えば、通勤に使っている自動車がありますが、週末は仕事以外でも使っているとします。
しかし、仕事にかける車の占有率は使う人によって違います。(毎日1時間かけてマイカー通勤している人もいれば10分しか使わない人もいます。)
なので、基本的には按分する割合は自分で決めることになります。
…が、あまりに極端な割合や常識的にツッコミ入れられるような割合にしておくと税務署から指摘があるかもしれません。

また、同じ税金関係でも、所得税や住民税、延滞金、罰金などは経費に算入することはできません。
(そもそも延滞金や罰金が経費として認めちゃダメだから

〔租税公課の対象外〕 (所法45①)
所得税、住民税、相続税、国保税(料)、税金の延滞金・加算金、罰金、過料など

修繕費

アパート・マンション経営をしている人ならば、何かしらのメンテナンスは必要になってきます。
水回りや備品の修理、共有スペースの清掃などがあてはまるかと思います。

逆に、青空駐車場や土地だけ貸しているような場合は基本的に修繕費は発生することがないかと思います。

また、修繕費と思っていたのに資本的支出という扱いになり、減価償却費となることがあるので注意が必要です。 (所令181127
(資本的支出は↓のとおり、減価償却費は更に⇊で解説します。)

資本的支出とは…
資産の価値を高める、使用可能期限を延ばすような支出のこと。
(例)床をバリアフリーに改修した。雨漏りするようになったので修繕+防水シート仕様にした。など (所基通7-8)

支出額が20万円未満、周期が3年以内の場合は修繕費となります。
(例)ガラスが割れたので強化ガラスに変えたが支払額は12万円だった、など

減価償却費

収入を得るために取得したモノが、高額で、数年かけて使用するような場合は、その1年間での必要経費にするのではなく数年かけて経費を使っていくことになります。

種類・構造・用途などで耐用年数(何年で経費を使うか)が法的に決まっています。
これを法定耐用年数といい、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(リンク先 e-gov)で細かく規定されています。

<対象>

・建物、建物に付属する設備、器具・備品など

<対象外>

土地、販売用の建物・機械、建設中の建物など
・使用可能期間が1年未満 or 取得価格10万円未満のもの

【主な減価償却資産の法廷耐用年数表】(抜粋)

構造・用途 資産 耐用年数
建物木造・合成樹脂造のもの(店舗・住宅用)22年
建物 鉄骨鉄筋コンクリート造のもの(住宅用) 47年
建物付属設備電気設備(照明含む)15年
建物付属設備 冷房・暖房設備 13年
建物付属設備 給排水・衛生設備、ガス設備 15年
構築物舗装道路・舗装路面(アスファルト敷)10年
器具・備品事務机・イス、キャビネット(金属以製外)8年
器具・備品 パソコン(サーバ以外) 4年
器具・備品 プリンタ、デジカメ 5年

減価償却費の計算方法

減価償却費の計算は、H19.4.1以降に取得した場合とそれ以前とで計算方法が変わります。

また、定額法と定率法のどちらで計算するかは選択可能…ですが、定率法で計算したいときは事前に届出が必要となります。
届出は面倒(?)なので、ここではH19.4.1以降に取得した定額法のみで解説します。
※定率法だと計算が複雑なため、会計ソフトを使うか税理士に頼んだ方がラクです。

〔定額法の計算方法〕  (所令120の2①一-イ(1))

減価償却費 = 取得価格 × 定率法の償却率 × 本年中の償却期間

取得価格購入代金、建築費、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税など…
(その資産を取得するために支払った費用や、事業に使用するために支払った費用が含まれる)
※資本的支出があるときは「支出した金額=取得価格」。
定額法の償却率 1÷耐用年数=償却率
(例)耐用年数が4年のものの償却率は…1÷4=0.25
本年中の償却期間 基本的に「12/12」(12カ月)
ただ、年の途中で取得したものについては、取得月から12月までの月数。
(例:4月に購入した場合、その年の償却期間は9/12)
貸付割合 貸付割合とは、事業所得でいう事業専用割合のことで、不動産収入以外の目的でも使っているときは不動産収入に使ってる割合で経費をとることになる。通常100%で問題ない。
貸付割合があるとき…減価償却費×貸付割合が経費にできる額。
(例)不動産の管理をするために200万円の自動車を購入したが、それ以外でも使っている場合
貸付割合(不動産管理で使っている割合)が30%とすると…
減価償却費 = 200万円×0.167×1(12/12)×30% = 100,200円 (耐用年数6年で計算)

減価償却の特例措置

【一括償却】 (所令139①~③)

取得価格が10万円~20万円のものは、納税者の希望により3年間で償却することができます。

計算方法は、取得年を含む3年間で「取得価格÷3」ずつ経費に計上することになります。(カンタンでシンプル。)

ちなみに、10万円未満のものは減価償却費にならないので、消耗品費とか雑費として計上します。


【中古資産を取得したときの耐用年数】 (耐令3①一)

中古の場合は、通常の耐用年数ではなく、取得後の使用可能年数を見積もって耐用年数とします。

ただ、見積ることが難しいときは、大規模な改修をしていない限り↓の計算式で求めます。

中古資産の耐用年数計算法

1.法定耐用年数を経過した資産 … 法定耐用年数×0.2

2.法定耐用年数の一部を経過した資産 … 法定耐用年数-(経過年数×0.8)

※最低2年となり、1年未満の端数は切り捨て。

(例)3年落ちの中古の普通自動車を購入した場合

普通自動車の耐用年数は6年なので、↑2の計算をすると
6年-(3×0.8)=3.6年 ≒ 3年 (端数は切り捨て)

借入金利子

不動産所得を得るために取得した資産にかかる借金の利子のこと。
不動産投資をする人の大半は銀行等から資金を借りるため、借入金利子を申告することになります。

ただ、土地にかかる借金の利子分は経費にはとれますが、他の所得から差し引く(損益通算する)ことはできません。

土地取得の借入金利子があるときの注意点〕

土地取得にかかる利子は損益通算の対象外となります。(租税特別措置法施行令26の6①)

  • 不動産所得が赤字のとき、所得0円となる。(マイナスにならない)
  • 不動産所得が赤字で、赤字額より借入金利子の方が大きいとき、所得=赤字額-借入金利子となる。

(例)不動産収入500万円、必要経費700万(うち土地の借入金利子300万円)、所得-200万円のとき
通常は所得-200万円となるが、借入金利子分が損益通算できないため、所得0円となります。
※借入金利子50万円のとき、所得は-150万円となります。

不動産の事業的規模

不動産の収入が↓のどちらかを満たしている場合は事業的規模でやっているね、とみなされます。

  • アパート10室以上
  • 貸家5棟以上

駐車場の場合は駐車スペース5台分を1室とカウントします。(所基通26-9)

では、事業的規模と認められるとどんなメリットがあるのでしょうか?

不動産の「事業的規模」と認められたときのメリット

区分 事業的規模のとき 該当しないとき
固定資産の除去等の損失全額を必要経費OK「除去損失等」を差し引く前の「不動産所得」の金額を限度に、必要経費OK
貸倒損失回収不能な年の必要経費に算入OK収入計上年分の所得がなかったものとして、所得金額の計算をやり直し
青色申告の事業専従者給与(控除)
or 白色申告の事業専従者控除
適用OK適用ナシ
青色申告特別控除最高65万円の控除最高10万円の控除

大きなメリットとしては、専従者控除が使えるようになるのと、青色申告特別控除の65万円が適用されることです。
この2つは節税に必須ですからね。

間違いやすい注意点としては、事業的規模となったからといって事業所得になるわけではありません。所得区分としては不動産所得のままです。

事業的規模になったときのデメリット

個人事業税(都道府県民税)がかかる場合があります。
ただ、通常290万円の控除があるので、それ以下の所得であればかからないことが多いです。

【参考】個人事業税の計算式

個人事業税 = (事業所得・不動産所得 - 事業専従者控除額 + 青色申告特別控除額- 損失の繰越等の控除額 -事業主控除額)×税率
※事業主控除額=290万円

<合わせて読んでみて>

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法的根拠(所得税法・基本通達)

所得税法

第26条(不動産所得)

不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(以下この項において「不動産等」という。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。

2  不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。

第45条(家事関連費等の必要経費不算入等)

居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。

一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの

二 所得税(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を行う居住者が納付する第131条第3項(確定申告税額の延納に係る利子税)、第136条(延払条件付譲渡に係る所得税額の延納に係る利子税)、第137条の2第12項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予に係る利子税)又は第137条の3第14項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予に係る利子税)の規定による利子税で、その事業についてのこれらの所得に係る所得税の額に対応するものとして政令で定めるものを除く。)

三 所得税以外の国税に係る延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及び重加算税並びに印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)の規定による過怠税

四 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による道府県民税及び市町村民税(都民税及び特別区民税を含む。)

五 地方税法の規定による延滞金、過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金

六 前号に掲げるものに準ずるものとして政令で定めるもの

七 罰金及び科料(通告処分による罰金又は科料に相当するもの及び外国又はその地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含む。)並びに過料

八 損害賠償金(これに類するものを含む。)で政令で定めるもの

九 国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)の規定による課徴金及び延滞金

十 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定による課徴金及び延滞金(外国若しくはその地方公共団体又は国際機関が納付を命ずるこれらに類するものを含む。)

十一 金融商品取引法第六章の二(課徴金)の規定による課徴金及び延滞金

十二 公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)の規定による課徴金及び延滞金

十三 不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)の規定による課徴金及び延滞金

所得税法 施行令

第120条の2(減価償却資産の償却の方法)

平成19年4月1日以後に取得された減価償却資産(第6号に掲げる減価償却資産にあっては、当該減価償却資産についての所有権移転外リース取引に係る契約が平成20年4月1日以後に締結されたもの)の償却費の額の計算上選定をすることができる法第49条第1項(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)に規定する政令で定める償却の方法は、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める方法とする。

一 第6条第1号及び第2号(減価償却資産の範囲)に掲げる減価償却資産(第3号及び第6号に掲げるものを除く。) 次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める方法

イ 平成28年3月31日以前に取得された減価償却資産(建物を除く。) 次に掲げる方法

(1) 定額法(当該減価償却資産の取得価額にその償却費が毎年同一となるように当該資産の耐用年数に応じた償却率((2)において「定額法償却率」という。)乗じて計算した金額を各年分の償却費として償却する方法をいう。以下この目及び第3目(減価償却資産の償却費の計算)において同じ。)

第126条(減価償却資産の取得価額)

減価償却資産の第120条から第122条まで(減価償却資産の償却の方法)に規定する取得価額は、別段の定めがあるものを除き、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に掲げる金額とする。

一 購入した減価償却資産 次に掲げる金額の合計額

イ 当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(関税法第二条第一項第四号の二(定義)に規定する附帯税を除く。)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
ロ 当該資産を業務の用に供するために直接要した費用の額

二 自己の建設、製作又は製造(以下この条において「建設等」という。)に係る減価償却資産 次に掲げる金額の合計額

イ 当該資産の建設等のために要した原材料費、労務費及び経費の額
ロ 当該資産を業務の用に供するために直接要した費用の額

三 自己が成育させた第6条第9号イ(生物)に掲げる生物(以下この号において「牛馬等」という。) 次に掲げる金額の合計額

イ 成育させるために取得した牛馬等に係る第1号イ若しくは第5号イに掲げる金額又は種付費及び出産費の額並びに当該取得した牛馬等の成育のために要した飼料費、労務費及び経費の額
ロ 成育させた牛馬等を業務の用に供するために直接要した費用の額

四 自己が成熟させた第6条第9号ロ及びハに掲げる生物(以下この号において「果樹等」という。) 次に掲げる金額の合計額

イ 成熟させるために取得した果樹等に係る第1号イ若しくは次号イに掲げる金額又は種苗費の額並びに当該取得した果樹等の成熟のために要した肥料費、労務費及び経費の額
ロ 成熟させた果樹等を業務の用に供するために直接要した費用の額

五 前各号に規定する方法以外の方法により取得した減価償却資産 次に掲げる金額の合計額

イ その取得の時における当該資産の取得のために通常要する価額
ロ 当該資産を業務の用に供するために直接要した費用の額

2 法第60条第1項各号(贈与等により取得した資産の取得費等)に掲げる事由により取得した減価償却資産(法第40第1項第1号(たな卸資産の贈与等の場合の総収入金額算入)の規定の適用があつたものを除く。)の前項に規定する取得価額は、当該減価償却資産を取得した者が引き続き所有していたものとみなした場合における当該減価償却資産のこの条及び次条第2項の規定による取得価額に相当する金額とする。

第127条(資本的支出の取得価額の特例)

居住者が有する減価償却資産(次条の規定に該当するものを除く。以下この条において同じ。)について支出する金額のうちに第181条(資本的支出)の規定によりその支出する日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入されなかつた金額がある場合には、当該金額を前条第1項の規定による取得価額として、その有する減価償却資産と種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとする

第139条(一括償却資産の必要経費算入)

居住者が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供した減価償却資産で取得価額が20万円未満であるもの(第120条第1項第6号及び第120条の2第1項第6号(減価償却資産の償却の方法)に掲げるもの並びに前条の規定の適用があるものを除く。)については、その居住者が当該減価償却資産の全部又は特定の一部を一括し、その一括した減価償却資産(以下この条において「一括償却資産」という。)の取得価額の合計額をその業務の用に供した年以後3年間の各年の費用の額とする方法を選択したときは、第4款(減価償却資産の償却)の規定にかかわらず、当該一括償却資産につき当該各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、当該一括償却資産の取得価額の合計額(以下この条において「一括償却対象額」という。)を3で除して計算した金額とする。

2 前項の規定は、一括償却資産を業務の用に供した日の属する年分の確定申告書に一括償却対象額を記載した書類を添付し、かつ、その計算に関する書類を保存している場合に限り、適用する。

3 居住者は、その年において一括償却対象額につき必要経費に算入した金額がある場合には、その年分の確定申告書に、第1項の規定により必要経費に算入される金額の計算に関する明細書を添付しなければならない。

第181条(資本的支出)

不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務を行なう居住者が、修理、改良その他いずれの名義をもってするかを問わず、その業務の用に供する固定資産について支出する金額で次に掲げる金額に該当するもの(そのいずれにも該当する場合には、いずれか多い金額)は、その者のその支出する日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。

一 当該支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測される当該資産の使用可能期間を延長させる部分に対応する金額

二 当該支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測されるその支出の時における当該資産の価額を増加させる部分に対応する金額

所得税基本通達

(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)

26-9 建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。

(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。

(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

(資本的支出の例示)

7-8-1 法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、例えば次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。(昭55年直法2-8「二十六」により追加)

(1) 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額

(2) 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額

(3) 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額

(注) 建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。

(修繕費に含まれる費用)

7-8-2 法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額が修繕費となるのであるが、次に掲げるような金額は、修繕費に該当する。(昭55年直法2-8「二十六」、平7年課法2-7「五」により改正)

(1) 建物の移えい又は解体移築をした場合(移えい又は解体移築を予定して取得した建物についてした場合を除く。)におけるその移えい又は移築に要した費用の額。ただし、解体移築にあっては、旧資材の70%以上がその性質上再使用できる場合であって、当該旧資材をそのまま利用して従前の建物と同一の規模及び構造の建物を再建築するものに限る。

(2) 機械装置の移設(7-3-12《集中生産を行う等のための機械装置の移設費》の本文の適用のある移設を除く。)に要した費用(解体費を含む。)の額

(3) 地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額。ただし、次に掲げる場合のその地盛りに要した費用の額を除く。

イ 土地の取得後直ちに地盛りを行った場合

ロ 土地の利用目的の変更その他土地の効用を著しく増加するための地盛りを行った場合

ハ 地盤沈下により評価損を計上した土地について地盛りを行った場合

(4) 建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の浸害を受けることとなったために行う床上げ、地上げ又は移設に要した費用の額。ただし、その床上工事等が従来の床面の構造、材質等を改良するものである等明らかに改良工事であると認められる場合のその改良部分に対応する金額を除く。

(5) 現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用の額及び砂利道又は砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した費用の額

(少額又は周期の短い費用の損金算入)

7-8-3 一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等(以下7-8-5までにおいて「一の修理、改良等」という。)が次のいずれかに該当する場合には、その修理、改良等のために要した費用の額については、7-8-1にかかわらず、修繕費として損金経理をすることができるものとする。(昭55年直法2-8「二十六」により追加、平元年直法2-7「五」、平15年課法2-7「二十」により改正)

(1) その一の修理、改良等のために要した費用の額(その一の修理、改良等が2以上の事業年度(それらの事業年度のうち連結事業年度に該当するものがある場合には、当該連結事業年度)にわたって行われるときは、各事業年度ごとに要した金額。以下7-8-5までにおいて同じ。)が20万円に満たない場合

(2) その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合

(注) 本文の「同一の固定資産」は、一の設備が2以上の資産によって構成されている場合には当該一の設備を構成する個々の資産とし、送配管、送配電線、伝導装置等のように一定規模でなければその機能を発揮できないものについては、その最小規模として合理的に区分した区分ごととする。以下7-8-5までにおいて同じ。

(形式基準による修繕費の判定)

7-8-4 一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において、その金額が次のいずれかに該当するときは、修繕費として損金経理をすることができるものとする。(昭55年直法2-8「二十六」により追加、平元年直法2-7「五」、平19年課法2-7「八」により改正)

(1) その金額が60万円に満たない場合

(2) その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合

(注)

1 前事業年度前の各事業年度(それらの事業年度のうち連結事業年度に該当するものがある場合には、当該連結事業年度)において、令第55条第4項《資本的支出の取得価額の特例》の規定の適用を受けた場合における当該固定資産の取得価額とは、同項に規定する一の減価償却資産の取得価額をいうのではなく、同項に規定する旧減価償却資産の取得価額と追加償却資産の取得価額との合計額をいうことに留意する。

2 固定資産には、当該固定資産についてした資本的支出が含まれるのであるから、当該資本的支出が同条第5項の規定の適用を受けた場合であっても、当該固定資産に係る追加償却資産の取得価額は当該固定資産の取得価額に含まれることに留意する。

(資本的支出と修繕費の区分の特例)

7-8-5 一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額(7-8-3又は7-8-4の適用を受けるものを除く。)がある場合において、法人が、継続してその金額の30%相当額とその修理、改良等をした固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、これを認める。(昭55年直法2-8「二十六」により追加、平7年課法2-7「五」、平19年課法2-7「八」により改正)

(注) 当該固定資産の前期末における取得価額については、7-8-4の(2)の(注)による。

(災害の場合の資本的支出と修繕費の区分の特例)

7-8-6 災害により被害を受けた固定資産(当該被害に基づき法第33条第2項《資産の評価損の損金算入》の規定による評価損を計上したものを除く。以下7-8-6において「被災資産」という。)について支出した次に掲げる費用に係る資本的支出と修繕費の区分については、7-8-1から7-8-5までの取扱いにかかわらず、それぞれ次による。(昭55年直法2-8「二十六」、平7年課法2-7「五」により改正)

(1) 被災資産につきその原状を回復するために支出した費用は、修繕費に該当する。

(2) 被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のために支出した費用について、法人が、修繕費とする経理をしているときは、これを認める。

(3) 被災資産について支出した費用(上記(1)又は(2)に該当する費用を除く。)の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでないものがある場合において、法人が、その金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、これを認める。

(注)

1 法人が、被災資産の復旧に代えて資産の取得をし、又は特別の施設(被災資産の被災前の効用を維持するためのものを除く。)を設置する場合の当該資産又は特別の施設は新たな資産の取得に該当し、その取得のために支出した金額は、これらの資産の取得価額に含めることに留意する。

2 上記の固定資産に係る災害の場合の資本的支出と修繕費の区分の特例は、令第114条《固定資産に準ずる繰延資産》に規定する繰延資産に係る他の者の有する固定資産につき、災害により損壊等の被害があった場合について準用する。

(ソフトウエアに係る資本的支出と修繕費)

7-8-6の2 法人が、その有するソフトウエアにつきプログラムの修正等を行った場合において、当該修正等が、プログラムの機能上の障害の除去、現状の効用の維持等に該当するときはその修正等に要した費用は修繕費に該当し、新たな機能の追加、機能の向上等に該当するときはその修正等に要した費用は資本的支出に該当することに留意する。(平12年課法2-19「十」により追加、令3年課法2-21「八」により改正)

(注)1 既に有しているソフトウエア又は購入したパッケージソフトウエア等の仕様を大幅に変更するための費用のうち、7-3-15の2(注)2《自己の製作に係るソフトウエアの取得価額等》により取得価額になったもの(7-3-15の3《ソフトウエアの取得価額に算入しないことができる費用》により取得価額に算入しないこととしたものを含む。)以外のものは、資本的支出に該当することに留意する。

2 本文の修正等に要した費用(修繕費に該当するものを除く。)又は上記(注)1の費用が研究開発費(自社利用のソフトウエアについてした支出に係る研究開発費については、その自社利用のソフトウエアの利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかな場合における当該研究開発費に限る。)に該当する場合には、資本的支出に該当しないこととすることができる。

(機能復旧補償金による固定資産の取得又は改良)

7-8-7 法人が、その有する固定資産について電波障害、日照妨害、風害、騒音等による機能の低下があったことによりその原因者からその機能を復旧するための補償金の交付を受けた場合において、当該補償金をもってその交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良をしたときは、その取得又は改良に充てた補償金の額のうちその機能復旧のために支出したと認められる部分の金額に相当する金額は、修繕費等として損金の額に算入することができる。
 当該補償金の交付に代えて、その原因者から機能復旧のための固定資産の交付を受け、又は当該原因者が当該固定資産の改良を行った場合についても、同様とする。(昭55年直法2-8「二十六」により追加)

(注) 当該補償金の交付を受けた日の属する事業年度終了の時までにその機能復旧のための固定資産の取得又は改良をすることができなかった場合においても、その後速やかにその取得又は改良をすることが確実であると認められるときは、当該補償金の額のうちその取得又は改良に充てることが確実と認められる部分の金額に限り、その取得又は改良をする時まで仮受金として経理することができる。

(地盤沈下による防潮堤、防波堤等の積上げ費)

7-8-8 法人が地盤沈下に起因して防潮堤、防波堤、防水堤等の積上げ工事を行った場合において、数年内に再び積上げ工事を行わなければならないものであると認められるときは、その積上げ工事に要した費用を一の減価償却資産として償却することができる。(昭55年直法2-8「二十六」により改正)

(耐用年数を経過した資産についてした修理、改良等)

7-8-9 耐用年数を経過した減価償却資産について修理、改良等をした場合であっても、その修理、改良等のために支出した費用の額に係る資本的支出と修繕費の区分については、一般の例によりその判定を行うことに留意する。(昭55年直法2-8「二十六」により追加)

(損壊した賃借資産等に係る補修費)

7-8-10  法人が賃借資産(賃借をしている土地、建物、機械装置等をいう。)につき修繕等の補修義務がない場合においても、当該賃借資産が災害により被害を受けたため、当該法人が、当該賃借資産の原状回復のための補修を行い、その補修のために要した費用を修繕費として経理したときは、これを認める。
 法人が、修繕等の補修義務がない販売をした又は賃貸をしている資産につき補修のための費用を支出した場合においても、同様とする。(平29年課法2-2「二」により追加)

(注)

  • 1 この取扱いにより修繕費として取り扱う費用は、12-2-6《災害損失特別勘定の設定》の災害損失特別勘定への繰入れの対象とはならないことに留意する。
  • 2 当該法人が、その修繕費として経理した金額に相当する金額につき賃貸人等から支払を受けた場合には、その支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入する。
  • 3 法人が賃借している法第64条の2第1項《リース取引に係る所得の金額の計算》に規定するリース資産が災害により被害を受けたため、契約に基づき支払うこととなる規定損害金(免除される金額及び災害のあった日の属する事業年度において支払った金額を除く。)については、災害のあった日の属する事業年度において、未払金として計上することができることに留意する。

租税特別措置法 施行令

第26条の6(不動産所得に係る損益通算の特例)

法第41条の4第1項 に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める金額とする。

1  その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した法第41条の4第1項 に規定する土地等(以下この条において「土地等」という。)を取得するために要した負債の利子の額が当該不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額を超える場合 当該損失の金額

減価償却資産の耐用年数等に関する省令

第3条 (中古資産の耐用年数等)

個人において使用され、又は法人(人格のない社団等を含む。以下第5条までにおいて同じ。)において事業の用に供された所得税法施行令第6条各号(減価償却資産の範囲)又は法人税法施行令第13条各号(減価償却資産の範囲)に掲げる資産(これらの資産のうち試掘権以外の鉱業権及び坑道を除く。以下この項において同じ。)の取得(法人税法第2条第12号の8(定義)に規定する適格合併又は同条第12号の12に規定する適格分割型分割(以下この項において「適格分割型分割」という。)による同条第11号に規定する被合併法人又は同条第12号の2に規定する分割法人からの引継ぎ(以下この項において「適格合併等による引継ぎ」という。)を含む。)をしてこれを個人の業務又は法人の事業の用に供した場合における当該資産の耐用年数は、前2条の規定にかかわらず、次に掲げる年数によることができる。
 ただし、当該資産を個人の業務又は法人の事業の用に供するために当該資産について支出した所得税法施行令第181条(資本的支出)又は法人税法施行令第132条(資本的支出)に規定する金額が当該資産の取得価額(適格合併等による引継ぎの場合にあっては、同法第62条の2第1項(適格合併及び適格分割型分割による資産等の帳簿価額による引継ぎ)に規定する時又は適格分割型分割の直前の帳簿価額)の100分の50に相当する金額を超える場合には、第2号に掲げる年数についてはこの限りでない。

一 当該資産をその用に供した時以後の使用可能期間(個人が当該資産を取得した後直ちにこれをその業務の用に供しなかつた場合には、当該資産を取得した時から引き続き業務の用に供したものとして見込まれる当該取得の時以後の使用可能期間)の年数

二 次に掲げる資産(別表第一、別表第二、別表第五又は別表第六に掲げる減価償却資産であって、前号の年数を見積もることが困難なものに限る。)の区分に応じそれぞれ次に定める年数(その年数が2年に満たないときは、これを2年とする。)

イ 法定耐用年数(第一条第一項(一般の減価償却資産の耐用年数)に規定する耐用年数をいう。以下この号において同じ。)の全部を経過した資産 当該資産の法定耐用年数の100分の20に相当する年数

ロ 法定耐用年数の一部を経過した資産 当該資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の100分の20に相当する年数を加算した年数