所得税・個人住民税は、納税義務者に帰属するすべての所得に対して課税することを原則としていますが、所得の中には、社会政策その他の見地から課税しないものがあります。
これを非課税所得といいます。
非課税所得は、所得税法及び租税特別措置法のほか、その他の法律に規定されています。
非課税所得は、所得金額の計算から除かれますから、非課税の適用を受けるための手続は原則として必要ありません。(確定申告不要)
なお、非課税所得について損失が生じても、その損失はなかったものとみなされます。(損益通算不可)
よくある非課税所得
身近にある所得で非課税になるものを集めました。
基本的にはこれだけ知っていれば十分です。
間違って申告してしまっても税務署側から訂正してくれることはありませんので、気が付いた時点で自分から訂正の申告(更正の請求)をして、支払いすぎた税金を返してもらいましょう♪
【主な非課税所得】
- 遺族年金、障害年金
- 失業手当、傷病手当、負傷又は疾病に起因して受ける給付金、生活保護給付金
- 心身や資材の損失に起因して受ける損害賠償金、慰謝料、見舞金(保険の満期金は一時所得)
- 給与所得者の出張旅費・通勤手当(通常必要と認められるもの)
- 児童手当、児童扶養手当
- 養育費、お小遣い(ただし贈与税の対象となる場合がある)
- 国内の宝くじ、ロト、スポーツ振興投票券(toto)などの当選金・払戻金(競馬・競輪・競艇などは一時所得)
- 通常必要な動産(家具、什器、衣服、自家用車等)の譲渡による所得(フリマなど)
- NISA(非課税口座内の少額上場株式にかかる配当所得・譲渡所得等)
- 特別定額給付金(2020年、全国民に一律10万円配布されたもの)
- その他
【注意点】
↑について、間違えやすいものの一つに「通常必要な動産の譲渡所得」があります。
例えば、メルカリやラクマなどのフリマサイトやヤフオク、リアルフリマなどで「通常必要な動産」…例えば、自分が使っていた中古品や古着、もらったけど使っていない食器や日用品などを売って得た収入は非課税となりますが、転売・せどり目的で仕入れた物品を販売している場合は課税(税金がかかる対象)となります。
コロナ関連の課税・非課税比較表
コロナ関連でさまざまな給付金、補助金、支援金などがありましたが、非課税になるものと課税になるものがあります。
ある程度区分けされていますが、一言で説明するなら、受け取った人が個人なのか事業者なのかという点です。
個人は非課税、事業者は課税になっている場合が多いです。(全部ではないです。)
非課税
対象 | 根拠法令 |
---|---|
・新型コロナウイルス感染症対応休業支援金、給付金 | (雇用保険臨時特例法7条) |
・特別定額給付金 (全国民に一律10万円配布されたもの) | (新型コロナ税特法4条 1 号) |
・子育て世帯への臨時特別給付金 | (新型コロナ税特法4条 2 号) |
【学資として支給される金品】 ・学生支援緊急給付金 | (所得税法9条1項 15 号) |
【心身又は資産に加えられた損害について支給を受ける相当の見舞金】 ・低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金 ・新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金 ・企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置における割引券 ・東京都のベビーシッター利用支援事業における助成 | (所得税法9 条 1 項 17 号) |
課税
対象 | 課税の区分 |
---|---|
・持続化給付金(事業所得者向け) ・家賃支援給付金 ・農林漁業者への経営継続補助金 ・文化芸術・スポーツ活動の継続支援 ・東京都の感染拡大防止協力金 ・雇用調整助成金 ・小学校休業等対応助成金、支援金 | 事業所得 |
・持続化給付金(給与所得者向け) ・Go Toキャンペーン事業における給付金 | 一時所得 |
・持続化給付金(雑所得者向け) | 雑所得 |
※参考:国税のおける新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取り扱いに関するFAQより
<注意点>
事業所得は「総収入金額」から「必要経費」を差し引くことができます。
よって、各種給付金等の申請手続に際して発生した費用(行政書士に対する報酬料金など)は、この必要経費に該当します。
損害賠償金等の課税関係
損害賠償金や補償などは内容によって課税になる場合があります。
ややこしいので主なものを一覧にまとめました。
心身に加えられた損害
賠償の内容 | 課税関係 | 参考法令等 |
慰謝料などの精神的損害の賠償 | 非課税 | 所令30一 |
休業中の給与や収益の補償 | 非課税 | 所令30一 |
医療費などの身体の障害に伴う費用の賠償 | 非課税 | 所令30一 |
相当の見舞金 | 非課税 | 所令30三 |
資産に加えられた損害
賠償の内容 | 課税関係 | 参考法令等 |
---|---|---|
棚卸資産、準棚卸資産、山林、工業所有権・著作権等の損害賠償 | 課税 | 所令94①一 |
固定資産に受けた損害賠償で、契約・収用等に基づく補償 | 課税 | 所令95 |
固定資産に受けた損害賠償で、突発的事故等による補償 | 非課税 | 所令30二 |
休業中の収益等の賠償 | 課税 | 所令94①二 |
休業中の雇人費等の必要経費の賠償 | 課税 | 所令30 所基通9-19 |
相当の見舞金 | 非課税 | 所令30三 |
【所得税及び措置法による主な非課税所得】
区 分 | 非課税所得の項目及び内容 |
利子・配当所得関係 | 1. 障害者等の少額預金の利子(所法10) 2. 勤労者財産形成住宅の利子等(措法4の2) 3. 勤労者財産形成年金貯蓄等の利子等(措法4の3) 4. 納税準備預金の利子(措法5) 5. オープン型証券投資信託の特別分配金(所法9①十一、所令27) 6. 非課税口座内、未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当等(いわゆる「NISA、ジュニアNISA」)(措法9の8、9の9) |
給与所得・公的年金関係 | 1. 傷病者や遺族などの受け取る恩給、年金等(所法9①三、所令20) 2. 給与所得者に支給される一定の旅費、限度額内の通勤手当、職務の遂行上必要な現物給与(所法9①四~六、所令20~21) 3. 国外で勤務する者の受ける一定の在外手当(所法9①七、所令22) 4. 外国政府、国際機関等に勤務する外国政府職員等が受ける給与所得(所法9①八、所令23、24) 5. 文化功労者年金法の規定による年金等(所法9①十三) 6. 特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益(いわゆる「税制適格ストック・オプション」(措法29の2) |
譲渡(山林)所得関係 | 1. 生活に通常必要な動産の譲渡による所得(所法9①九、所令25) 2. 資力喪失の場合の強制換価手続による譲渡による所得等(所法9①十、所令26) 3. 非課税口座内、未成年者口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等(いわゆる「NISA、ジュニアNISA」) (措法37の14、37の14の2) 4. 国や地方公共団体等に財産を寄附した場合の譲渡所得等(措法40) |
その他 | 1. 内廷費及び皇族費(所法9①十二) 2. オリンピック、パラリンピックにおいて優秀な成績を収めた者に財団法人日本オリンピック委員会等から交付される金品(所法9①十四) 3. 学資金及び扶養義務を履行するために給付される金品(所法9①十五、所令29) 4. 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(所法9①十六) 5. 心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基づいて取得する保険金、損害賠償金、慰謝料など(所法9①十七、所令30) 6. 公職選挙法の適用を受ける選挙に係る公職の候補者が選挙運動に関し取得する金銭等(所法9①十八) 7. 都道府県、市区町村から、消費税率の引上げに際して低所得者に配慮する観点から支払われる一定の給付金(措法41の8、措規19の2) |
<根拠法令>
(所法9、10、その他表に掲載)