住宅のリフォーム(改修)はある程度まとまった資金が必要となります。
せっかくリフォームしたのなら、オトクに税金を減らしてもらいましょう。
今回はバリアフリー改修工事をしたときの減税制度について解説します。
工事費用が高額になりやすいため、減税効果が高い制度です。
知らないと損する知識ですので、少しややこしいですが自分や家族のために学習しましょう。
バリアフリー改修工事って何が対象?
減税の対象となるものは、工事を行う居住者の条件と、工事する内容の2つの条件をクリアする必要があります。
工事内容は、一般的にバリアフリー(障害除去)と思われるものならば大抵OKです。
工事施工主の条件
次のどれか一つに当てはまる人
A. 50歳以上
B. 要介護、要支援の認定を受けている(介護保険法の規定)
C. 障害者(税法上)
D. 高齢者等と同居している(高齢者等:65歳以上、またはBかCに該当する人)
バリアフリー工事の対象
通路・出入口を広げる | 介助用の車いすで移動するために、通路や出入口の幅を広げる工事 |
階段の勾配を緩和 | 階段を改良(勾配を緩和)する工事 |
バスルームの改良 | 次のいずれかに該当 ・床面積を広くする工事(自分、または入浴の介助を行うため) ・浴槽の高さを低くする工事(入りやすくする) ・浴槽に出入りしやすくする工事(踏み台などの設置) ・身体を洗いやすくする水栓器具の取付、取替工事 |
トイレの改良 | 次のいずれかに該当 ・床面積を広くする工事 ・便器を洋式に替える工事 ・便器の座高を高くする工事 |
手すりの取付 | 手すりを取り付ける工事 |
床の段差の解消 | 床の段差をなくす工事 |
出入口のドアの改良 | 次のいずれかに該当 ・開戸を引戸や折戸などに替える工事 ・開戸のドアノブをレバーハンドルなどに替える工事 ・戸の開閉を簡単にする器具を付ける工事 |
床材の取替 | 床の材料を滑りにくいものに替える工事 |
バリアフリー工事したら税金減額してくれるの?
残念ながら↑の条件のバリアフリー工事をしたからといって、全員が減税対象となるわけではありません。
更に↓の条件をクリアしなければなりません。
また、住宅ローンの有無やローン年数などによって控除のタイプや控除額が変わります。
条件1:本人所得が3,000万円以下
居住者本人の合計所得金額が3,000万円以下でなければ減額制度は適用されません。
ただし、去年は3,500万円あったけど、今年は2,000万円しかない、というときは今年分は減額対象となります。(3,000万円を超えた年だけダメ)
条件2:工事した範囲、費用、用途の制限
- 工事後の床面積が50平方メートル以上
- 床面積の半分以上が居住用
- 工事費用が50万円以上で、費用の半分以上が居住部分
要するに、事務所・店舗と自宅を兼ねているような住宅の場合、あくまでも居住用としてリフォームしたのならOKですよ、ということ。
また、国や自治体などからリフォーム関係の補助金をもらっている場合は、工事費用から差し引くことになります。(100万円の工事をして30万円の補助金をもらったら工事費用は70万円となります。)
一人暮らし用の小さめな住宅の場合は、床面積50平方メートルは要チェック!
条件3:リフォームしたら半年以内に住むこと
工事完了日から6カ月以内に居住することが必要です。
通常、問題ない条件だと思います。
条件4:住宅ローンの有無で減額内容がかわる
住宅ローンを組んでいるかどうか、ローンは何年なのか、工事費用がいくらかで、税金が減額される内容が変わってきます。(下表のとおり)
条件 | 住宅借入金等特別控除 | 特定増改築等住宅借入金等特別控除 | 住宅特定改修特別控除 |
住宅ローン | 10年以上必須 | 5年以上必須 | なくてもOK |
工事費用 | 100万円以上 | 50万円以上 | 50万円以上 |
さて、難しくいろいろと条件がありますが、要するに・・・
普通の家で、誰が見てもバリアフリー工事になると思うような工事をして、100万(50万)円以上の費用がかかって、一般的な所得の方であれば対象になります。
なので、実家で親が住んでいるけど、水まわりとかが傷んできたりしたときに、修理するついでに段差をフラットにしたり手すりとかをつけるだけで、税金の減額措置が受けれます。
ただ、親の所得税がどのくらいかかっているかどうかですが…。
まだバリバリ仕事してて所得税がかかっているのであれば、退職前にリフォームしておく方が税制上は有利ですので、ご参考ください。
減額の計算方法・適用期間
(1) 住宅借入金等特別控除(ローン10年~)
減額できる額は、原則として、住宅ローンの年末残高の1%分となります。
減額してもらえる期間は最大10年間となります。(10年以内にローンを返し終わったら控除はゼロです。)
住宅ローンの年末残高
まず、ローンの年末残高(年末時点でローンがいくら残っているか)が基準の数字となります。
そして、工事をするときに行政からの補助金があれば年末残高から差し引きます。
また、親の援助があり、贈与税の非課税特例を使う場合は、年末残高から援助金を差し引きます。
そうやって計算した年末残高の数値を基に減額してくれる額(控除額)を計算していきます。
住み始めた年(居住の用に供した年)
工事が終わった後の半年以内に住み始めることが条件の一つですが、住み始めた年がいつになるのかで控除額が変わります。
通常は、工事が終わればすぐに住み始めると思いますので、工事終了日の次の日以降になるかと思いますが、年末を挟む工事を行う場合はややこしくなりますので避けた方が無難です。(年末にリフォームする人もあまりいないと思いますが。)
居住の用に供した年 | 控除額(上限額) | 控除する年数 |
---|---|---|
H26.1.1~R1.9.30 | 年末残高×1%(40万円) ※特定取得以外のときは20万円 | 10年 |
R1.10.1~R2.12.31 ※特別特定取得のとき | 1年目~10年目 年末残高×1%(40万円) 11年目~13年目 (A,Bいずれか少ない方) A 年末残高〔上限4,000万円〕×1% B(住宅取得等対価の額-消費税額)〔上限4,000万円〕×2%÷3 | 13年 |
R1.10.1~R2.12.31 ※それ以外のとき | 年末残高×1%(40万円) ※特定取得以外のときは20万円 | 10年 |
R3.1.1~R3.12.31 | 年末残高×1%(40万円) ※特定取得以外のときは20万円 | 10年 |
表をみれば一目瞭然ですが、【特別特定取得】というヤツに該当しなければ、年末残高の1%分(最大40万円まで)が10年間減額されますよ、ということになります。
ただ、特定取得に該当しなければ上限が20万円になりますよ、ということです。
特定取得とは、消費税8%か10%のときに工事をした、という意味です。
【特別特定取得】については消費税10%に上げるときに作ったオマケ的な制度ですが、控除額がショボイので気にする必要はありません。(説明がややこしいので省略します。)
まとめ
- 控除額=年末残高の1%分が減額(最大40万円)
- 控除期間=最大10年間
(2) 特定増改築等住宅借入金等特別控除(ローン5年~)
控除期間は5年間です。
控除額=A×2%+(B-A)×1% (最高125,000円)
A:年末残高の合計額のうち、バリアフリー改修工事に要した費用の合計額に相当する部分。(限度額250万円)
B:年末残高の合計額(最高1,000万円)
<注意点>
- バリアフリー改修工事を含む増改築等に関して補助金等を受ける場合は、補助金部分を差し引きます。
- Aの限度額250万円は特定取得(消費税率8%,10%で取得したとき)に該当するため、それ以外の限度額は200万円となります。
例として、100%バリアフリー改修工事をして、その費用が400万円かかり、5年以上のローンで年に50万円ずつ返済するとき
この場合、1年目の控除額は…
A=250万円、B=400万円となるため、250万円×2%+(400万円-250万円)×1%=65,000円となります。
2年目以降はローン残高が減っていきますので、それに合わせて控除額も減ります。
(以下の表を参照。簡単にするため金利計算は無視。)
経過年数 | ローン残高A (MAX250万円) | ローン残高B (MAX1,000万円) | 控除額 |
1年目 | 250万円 | 400万円 | 65,000円 |
2年目 | 250万円 | 350万円 | 60,000円 |
3年目 | 250万円 | 300万円 | 55,000円 |
4年目 | 250万円 | 250万円 | 50,000円 |
5年目 | 200万円 | 200万円 | 40,000円 |
まとめ
控除額=A×2%+(B-A)×1%
A:年末残高(上限250万円)、B:年末残高(上限1,000万円)
<注意点>
- 1年ごとの控除上限額:125,000円
- 最大5年間適用OK
(3) 住宅特定改修特別税額控除(ローンなし)
こちらは、住宅ローンがなく、一括で支払った場合が対象となります。
簡易な工事や数百万円分ならローンを組まない人もいるかと思いますが、ローンがなくても減額してもらえますので、ぜひ活用しましょう。
控除額=バリアフリー改修工事にかかった費用の額×10% (最大20万円)
<注意点>
- 控除額の100円未満は切り捨て。
- 工事に関する補助金があれば、費用から差し引きます。
手続き方法
住宅借入金等特別控除の手続き
1回目と2回目以降では手続きの方法が変わります。1回目は提出書類が多くて面倒です。
1回目の手続き
下記の書類を用意して、税務署で確定申告する必要があります。
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 年末残高等証明書
- 増改築等工事証明書
- 家屋の登記事項証明書、請負契約書等の写し(補助金があればそれの証明書も)
2回目以降の手続き
下記の書類を用意して、確定申告or勤務先での年末調整で手続き可能。
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 年末残高等証明書
特定増改築等住宅借入金等特別控除の手続き
↑の住宅借入金等特別控除の手続き方法とほぼ同じです。
住宅特定改修特別税額控除の手続き
この控除は改修工事をした翌年1回だけの手続きになります。
ただ、同じように、必要な書類を添えて、税務署で確定申告する必要があります。
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 増改築等工事証明書
- 家屋の登記事項証明書(家屋の床面積が50平方メートル以上あることの証明)
※要介護、要支援の親族と同居している場合での適用の場合、介護保険の被保険者証の写し
バリアフリー改修工事の住宅控除まとめ
工事施工主
50歳以上、要介護・要支援の認定を受けている人、障害者、高齢者等と同居している人、のいずれかの人
対象の工事
通路・出入口を広げる、階段の勾配を緩和、バスルームの改良、トイレの改良、手すりの取付、床の段差の解消、出入口のドアの改良、床材の取替のいずれかの工事
その他の要件
最低条件
1.合計所得3,000万円以下で工事完了日から半年以内に住んでいること。
2.工事後の床面積が50平方メートル以上で、床面積の半分以上が居住用で、工事費用の半分以上が居住部分。
3.他の住宅関係の特例控除を使ったときはその後10年間は適用不可。
その他条件
どの控除が適用できるかは下表のとおり。複数に該当するときはいずれか1つを選択可能。
要件・控除額 | 住宅借入金等特別控除 | 特定増改築等住宅借入金等特別控除 | 住宅特定改修特別税額控除 |
ローン年数 | 10年以上 | 5年以上 | なくてもOK |
住宅ローン | 10年以上必須 | 5年以上必須 | なくてもOK |
工事費用 | 100万円以上 | 50万円以上 | 50万円以上 |
控除額 | 年末残高の1%分 (最大40万円) | A×2%+(B-A)×1%(最大125,000円) A:年末残高(上限250万円) B:年末残高(上限1,000万円) | バリアフリー改修工事にかかった費用の額×10% (最大20万円) |
控除適用期間 | 最大10年間 | 最大5年間 | 1年 |
手続方法 | 確定申告 ※2年目以降は年末調整OK | 確定申告 ※2年目以降は年末調整OK | 確定申告 |