結論:配偶者控除は自分が思ってるより適用できる
配偶者控除って「共働きだと関係ない」って思っていませんか?
そういう誤解をしている人、ムダに税金を支払っている可能性がありますよ。
税制改正により平成30年分の税金から配偶者控除のしくみが大きく変わっています。
それに伴って、配偶者控除(配偶者特別控除)が適用できる人がグッと増えているのです。
結論として「配偶者の年収(給与収入)が200万円ぐらいまでは控除が使える」ということです。
(改正前は年収130万円ぐらいまでしか控除されなかったので130万円の壁と言われていました。…社会保険の扶養条件もありますが。)
これだけ見ても「なにそれ?ワカンナイんですけど…」っていう人は、続きをご覧ください😄
そもそも控除って?
控除の説明をする前に、サラッと税金(所得税・住民税)の計算方法をおさらいしておきましょう。
税金は↓の式で計算します。
税金=(収入-経費-控除)×税率
※正確には税額を計算した後に「税額控除」を引くことになりますが、今回はわかりやすさ重視で省略しています。
サラリーマンなどの会社員で置き換えていうと…
- 収入=給与の年収(天引きされる前の総支給額)
- 経費=給与所得控除(年収によって自動計算される)
となります。
控除とは…例えば、障がい者やひとり親であったり、子どもを養育したりしている人は、それ以外の人より経済的な余裕がないことが多いです。
税の制度は、人それぞれの事情を考慮してあげようよ、っていう趣旨で控除が作られています。
なので、控除の部分は人によって額が違うところになります。
今から解説する「配偶者控除」は控除にあたるものですね。
当たり前ですが、適用される控除は税制で決まっています。
配偶者控除の条件
配偶者控除を適用する(減税してもらえる)にはいくつかの条件があります。
↓の条件をすべてクリアしている人は適用できます。
(ココでは、配偶者控除を受ける(減税してもらう)人を「納税者」、もう一方の配偶者を「被扶養者」とします。)
共通 | 納税者の条件 | 被扶養者の条件 |
---|---|---|
民法でいう配偶者 (内縁関係はダメ) | 昨年中の合計所得が1,000万円以下 | 昨年中、事業専従者ではない |
配偶者と生計同一 (別居OK) | 昨年中の合計所得が133万円以下 |
ひとことでまとめると…
◆戸籍上「配偶者」となっていて、その配偶者と同一生計であり、自分の合計所得が1,000万円以下&配偶者の合計所得が133万円以下。(ついでに配偶者は他の家族の専従者ではない)
注意点としては、収入と所得は違う、ということです。
よくある「103万円の壁」とは給与の年収のことです。
つまり、収入のことをいっており、所得ではないのです。
そして、配偶者控除を受けるには収入ベースで考えるのではなく、所得が重要なのです。
配偶者控除には「配偶者控除」と「配偶者特別控除」があります。
説明がややこしくなるので、ココでは配偶者特別控除も配偶者控除と呼ぶことにします。
ザックリいうと、被扶養者の所得が48万円を超えると配偶者特別控除に切り替わる、ということです。
控除額
控除額は、控除を受ける納税者本人(納税者)のその年における合計所得金額と、もう一方の配偶者(被扶養者)の合計所得金額によって↓表のようになります。
→納税者の合計所得 ↓被扶養者の合計所得 | 900万円以下 | 900万円超 950万円以下 | 950万円超 1,000万円以下 |
---|---|---|---|
48万円以下・年齢70歳未満 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
48万円以下・年齢70歳以上 | 48万円 | 32万円 | 16万円 |
48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
この控除額は所得税の控除額です。
住民税の控除額はこれより若干少なくなりますが、ほぼ同様です。
また、被扶養者の所得が48万円以下のときは、条件によって↓の追加ボーナスが適用できます。
- 被扶養者の年齢が70歳以上のとき、控除額がアップ
- 被扶養者が障害者のとき、配偶者控除+障害者控除を適用できる
- 住民税が非課税になることがある(非課税判定の計算対象になる)
まとめると、↓のとおり。
よくある勘違い・Q&A
パート収入がいくらまでなら配偶者控除が受けられるの?
給与としてもらっているのであれば
約200万円です。
配偶者控除は給与収入103万円まで、配偶者特別控除は103万円~200万円となります。
パート収入の他に副業してたらダメ?
パート収入から計算した給与所得と副業(雑)所得の
合計が133万円以下なら控除がありますよ。
(例)
パート収入が100万円、副業の収入が80万円だったとき
パート収入を給与とすると、給与所得=100万円-55万円=45万円
副業の経費が30万円かかったとすると、雑所得=80万円ー30万円=50万円
合計所得=45万円+50万円=95万円
この場合、配偶者特別控除を受けられます。
共働きだから配偶者控除は関係なくない?
産休・育休・失業などで仕事を休んだときは
収入が減るので控除を受けられるかも。
(例)
妻が2月末から産休・育休に入って、12月末まで収入はナシ。
妻の月収は30万円だったとき。
このとき、妻の年収は30万円×2ヵ月分=60万円。
ボーナスが40万円あったとしても、60万円+40万円=100万円
仮に昨年12月分の給与が1月に入る給与形態の人でも、100万円+30万円=130万円。
このため、配偶者控除(配偶者特別控除)の適用OKとなります。
単身赴任で妻と別居してるけど適用されるの?
同居しているかどうかは適用要件ではありません。
生計一で要件を満たしていればOKです。
その他の例として、配偶者が長期入院中や施設入所、海外転出などで別居となっている場合でも、配偶者控除の要件を満たしていればOKです。
ただし、配偶者が国内に居ない(海外転出している)場合は、送金記録(生計一であることの根拠資料)などが必要になります。
お互いに配偶者控除を受けてもいいの?
配偶者控除の相互適用はダメです。
<補足>
令和2年分より、お互いに年末調整で「配偶者を扶養しています」という申告書を提出することはできないことになりました。
また、年金受給者の場合も同様に「扶養親族等申告書」を提出するときは夫婦お互いに配偶者控除等の対象とすることはできません。
※相互適用してしまった場合は、確定申告か住民税申告で相互適用している状態を訂正することになります。
私(子)が母を扶養しているだけど
父は配偶者控除が適用できるの?
・子→母(妻):扶養控除
・父(夫)→母(妻):配偶者控除
これはNG!重複はできません。
<補足>
同じ人を配偶者控除と扶養控除の両方を適用することはできません。
重複扶養してしまった場合は、確定申告(住民税申告)でどちらか一方の扶養控除を取り下げる必要があります。
また、放置していたりどちらかを決めれない場合は、原則「配偶者控除」が優先されます。
<所得税法施行令 第218条第2項>
同一人をそれぞれ自己の同一生計配偶者又は扶養親族として申告書等に記載したとき、その他同項の規定により同一生計配偶者又は扶養親族のいずれに該当するかを定められないときは、その夫又は妻である居住者の同一生計配偶者とする。
<レアケース>
Q) 夫が6月に死亡し、その後息子の扶養に入った。夫の死亡時の年末調整で配偶者控除を適用していた場合、息子の年末調整で扶養控除を適用できるか?
A) 適用OK♪
配偶者控除や扶養控除は、納税者が年の途中で死亡又は出国した場合は、その死亡又は出国の時の現況により判定することになっています。
よって、死亡した夫から見れば「死亡時点では配偶者控除が有効」であり、息子からみれば「12月末日時点で扶養控除が有効」であるため、両方の控除が適用OKとなる。
夫の事業の専従者扱いになっているけど、自分(妻)が配偶者控除を申告していいの?
・夫→妻:専従者
・妻→夫:配偶者控除
これは適用OKです♪
夫が妻を専従者&配偶者控除にすることはできません。
しかし、専従者となっている妻が配偶者控除を適用することはできます。
(夫が配偶者控除の要件を満たしているのであれば…)
<レアケース>
Q) 夫婦+子が同一生計であり、事業主である子が母(妻)を事業専従者としているとき、夫は妻の配偶者控除が適用できるでしょうか?
A) 適用NG!
ただし、夫(父)と子が生計別であれば配偶者控除は適用できます。
OK | NG |
---|---|
夫→妻:専従者 妻→夫:配偶者控除 | 夫→妻:専従者&配偶者 |
夫→妻:専従者 妻→夫:配偶者特別控除 | 夫→妻:専従者 妻→夫:専従者 |
子→妻:専従者 妻→夫:配偶者(特別)控除 | 子→妻:専従者 夫→妻:配偶者(特別)控除 ※子・夫・妻が生計一の場合 |
まとめ
いかがでしたでしょうか?
配偶者控除はおなじみの制度ではありますが、意外と知らなかったこともあったかと思います。
特に、フリーランスとして配偶者を専従者としている場合の申告ミスや、サラリーマン家庭の育休中の控除申告忘れなどは「あるある」です。
ムダな税金を支払わないようにしたり、間違った申告をして追徴にならないように気をつけましょう。
配偶者控除とは? | 配偶者の所得が一定以下のとき納税者の税金が減額される |
---|---|
要件 | ・配偶者と戸籍上の夫婦&生計一 ・納税者の合計所得が1,000万円以下 ・配偶者の合計所得が133万円以下 ・配偶者が専従者になっていない |
控除額 | 1万円~48万円 (通常、所得税:38万円・住民税:33万円) ※納税者・配偶者の所得や年齢による |
手続方法 | 会社員:会社の年末調整(会社に「配偶者控除等申告書」を提出) 年金受給者:年金支払者に「扶養親族等申告書」を提出 共通:確定申告 or 住民税申告 |
所得税・住民税が下がる
(年収500万円の会社員の場合、一般的に約10万円の減額)
- 別居はOKだが、事実婚(戸籍上の夫婦ではない)ときはNG。
- お互いに配偶者控除を取り合うことはできない。
- 配偶者が事業専従者になっている場合は、配偶者控除が適用されない。(夫→妻:専従者&配偶者控除はNG)
- 他の親族が配偶者を扶養控除としている場合は、配偶者控除を適用できない。(どちらか一方を選択)
- 専従者が事業主を配偶者控除にすることはできる。(夫→妻:専従者、妻→夫:配偶者はOK)