日本は国民皆保険制度があるので、誰しもが何らかの社会保険料を支払っていると思います。
(保険の扶養に入っている人は例外)
しかし、社会保険料を支払っているのにもかからず、正しく申告していないために払わなくてもいい税金を支払っている人が多々います。
今回は、そんな残念な人にならないために、知っているだけでトクする節税方法について解説します。
節税を制する者はお金持ちへの第一歩です。
税金って聞くだけで一歩引いているアナタにこそ読んでいただきたいと思います。
税金の計算方法をサラッとおさらい
税金の計算のしかたをサラッと確認しておきましょう。
ちなみに、ここでいう税金とは所得税と住民税のことです。
計算方法はほぼ同じなので、これ以降はまとめて税金として解説します。
税金=(所得-所得控除)×税率-税額控除
要するに、-(マイナス)となっている所得控除や税額控除が増えれば税金が下がる、ということです。
今回は、社会保険料控除という所得控除の一つについて解説します。
社会保険料控除を忘れずに申告すれば、今の自分の税金が下がるよ、ということになりますね。
それでは、社会保険料控除とはどのようなものなのでしょうか?
社会保険料控除とは?
社会保険料控除とは↓のとおりです。
(所法74、地法34①三・314の2①三)
社会保険料控除とは…納税者本人、本人と生計を一にする配偶者・その他親族の負担すべき社会保険料を支払った場合、その支払った金額を所得から控除できるもの。
要約すると、自分や家族の社会保険料を支払った金額を申告すれば税金が安くなるよ、ということです。
ここでいう親族とは、本人からみて6親等内の血族、3親等内の姻族のことです。
また、控除対象配偶者や扶養親族に該当しなくてもよい…つまり税の扶養になっていない人の社会保険料でも申告してかまわない、ということです。
控除の対象になるものは?
控除の対象になる社会保険料は↓のものが当てはまります。
(所法74②、所令208、借法41の7②、実特法5の2①など)
- 健康保険料、国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療制度にかかる保険料
- 厚生年金・国民年金の保険料、国民年金基金の掛金、農業者年金の保険料、船員保険の保険料、存続厚生年金基金の掛金
- 労災保険・雇用保険の保険料、恩給納金
- 共済組合の掛金 ※国家公務員・地方公務員・私立学校教職員
- 地方公共団体職員の一定の互助会の掛金 ※税務署長の承認を受けたもの
- 公庫等の復帰希望職員に関する経過措置の規定による掛金、健康保険・船員保険の承認法人等に支払う負担金
- 租税条約の規定により相手国の社会保障制度に対して支払うもののうち一定額 ※フランス共和国の社会保障制度の保険料
読む気になりませんよね。
わかります。
こんなもの全部覚えておく必要なんて全くありません。
必要なものは、↓のものだけでOKです。
・給与から差し引かれている社会保険料
・給与がない人は国民健康保険料・後期高齢者医療保険料、介護保険料
・掛けている年金(厚生年金・国民年金保険料、国民年金基金など)
・会社辞めた後の任意継続保険料や、建設組合や漁業組合などの保険料、など
※医師年金、歯科医師年金は対象外なので注意。
控除額は?
控除額 = 社会保険料支払額の全額
例えば、自分の社会保険料が年間70万円、親の国民健康保険料が年間30万円だったとすると、両方を合わせて100万円が社会保険料控除として申告することができます。
<注意点>
- 全納したときは通常、按分計算する。(所基通74・75-1(2))
- 全納期間が1年以内のもの、一定期間の保険料を全納できる旨の法令に基づいて全納したもの(国民年金保険料の2年全納制度など)は、その年で全額控除OK。(所基通74・75-2)
- 年金or給与から社会保険料が引かれている部分については、年金or給与の受給者が控除適用者となる。(つまり、天引きされている保険料は別の人で申告することができない!)
申告するときの必要書類は?
(所令262①二)
社会保険料控除を申告するときの書類はほとんど必要ありません。
国民年金の保険料・国民年金基金の掛金を申告するときだけ、支払をした旨を証する書類が必要となりますが、それ以外の場合はナシでOKです。
また、e-Taxで申告するならばそれも省略OKです。
e-Taxでの申告は添付書類が要らないのでホント便利です。
対面とか紙での提出のときは、本人確認やマイナンバー確認書類が必要だったりしますので…。
申告するときはスマホやパソコンで「国税庁 確定申告書等作成コーナー」から作ってみてください。
画面に沿って入力していくだけで誰でもカンタンに申告書が作れますよ♪
社会保険料Q&A
過去3年分の国民年金保険料を一括納付したときはどうなるの?
納付日の属する年分で控除できるよ。(所法74①)
(例)R3年中に3年分を一括で支払ったのであれば、R3年分の申告で3年分まとめて控除できる。
今年、翌年3月分までの保険料をまとめて支払ったときは?
全納した期間が1年以内のものは、全額を今年分の控除として申告してもOKだよ。(所法74、所基通74・75-2)
2年分の国民年金保険料を全納したときは?
全額を支払った年分で申告してOK。
ただ、各年分で控除することもできるよ。
(自分で選択可)
(所法74、所基通74・75-1・75-2)
妻の後期高齢者医療保険料を私の口座から口座振替で支払ったときは私で申告できる?
OK!
口座振替で支払った社会保険料は支払った人で申告できるよ。
ただ、年金から引かれている分は年金をもらっている人でないと申告できないよ。
※後期高齢者医療保険料は、申請すれば「年金からの特別徴収」→「普通徴収」に変更可能(ココ重要!)
ココにピンときた人は節税意識が高い人ですよ!
例えば、親の収入は年金だけで税金はかかっていないとします。
親の年金から後期高齢者医療保険料が年間10万円引かれています。
ということは、支払っている10万円は税金を下げてくれる機能を果たしていないことになっています。
しかし、これを普通徴収(自分で支払うこと)に変更することで、税金がかかっている他の家族で申告することができるようになるのです。
【参考】根拠となる税法など
所得税法
第74条(社会保険料控除)
居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合又は給与から控除される場合には、その支払った金額又はその控除される金額を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。
2 前項に規定する社会保険料とは、次に掲げるものその他これらに準ずるもので政令で定めるもの(第9条第1項第7号(在勤手当の非課税)に掲げる給与に係るものを除く。)をいう。
一 健康保険法の規定により被保険者として負担する健康保険の保険料
二 国民健康保険法の規定による国民健康保険の保険料又は地方税法の規定による国民健康保険税
二の二 高齢者の医療の確保に関する法律の規定による保険料
三 介護保険法の規定による介護保険の保険料
四 労働保険の保険料の徴収等に関する法律の規定により雇用保険の被保険者として負担する労働保険料
五 国民年金法の規定により被保険者として負担する国民年金の保険料及び国民年金基金の加入員として負担する掛金
六 独立行政法人農業者年金基金法の規定により被保険者として負担する農業者年金の保険料
七 厚生年金保険法の規定により被保険者として負担する厚生年金保険の保険料
八 船員保険法の規定により被保険者として負担する船員保険の保険料
九 国家公務員共済組合法の規定による掛金
十 地方公務員等共済組合法の規定による掛金(特別掛金を含む。)
十一 私立学校教職員共済法の規定により加入者として負担する掛金
十二 恩給法第五十九条(恩給納金)(他の法律において準用する場合を含む。)の規定による納金
3 第一項の規定による控除は、社会保険料控除という。
所得税法 施行令
第208条(社会保険料の範囲)
法第74条第2項(社会保険料の意義)に規定する政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 労働者災害補償保険法第4章の2(特別加入)の規定により労働者災害補償保険の保険給付を受けることができることとされた者に係る労働保険の保険料の徴収等に関する法律の規定による保険料
二 地方公共団体の職員が条例の規定により組織する団体(以下この号において「互助会」という。)の行う職員の相互扶助に関する制度で次に掲げる要件を備えているものとして財務省令で定めるところにより税務署長の承認を受けているものに基づき、その職員が負担する掛金
イ 当該互助会の事業が、地方公務員等共済組合法第53条第1項第2号から第13号まで(短期給付の種類等)に掲げる給付(当該給付に係る同法第61条(療養に関する退職又は死亡後の給付)の規定による給付を含む。)に類する給付のみを行うものであること。
ロ イに規定する給付に要する費用は、主として当該職員が負担する掛金及び当該地方公共団体の補助金によって充てられるものであること。
ハ 当該互助会への加入資格のある者の全員が加入しているものであること。
三 国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律附則第9条から第11条まで(公庫等の復帰希望職員に関する経過措置)の規定による掛金
四 平成25年厚生年金等改正法附則第5条第1項(存続厚生年金基金に係る改正前厚生年金保険法等の効力等)の規定によりなおその効力を有するものとされる旧厚生年金保険法(以下この号において「旧効力厚生年金保険法」という。)第138条から第141条まで(費用の負担)の規定により平成25年厚生年金等改正法附則第3条第11号(定義)に規定する存続厚生年金基金の加入員として負担する掛金(旧効力厚生年金保険法第140条第4項(徴収金)の規定により負担する徴収金を含む。)
第262条(確定申告書に関する書類等の提出又は提示)
確定申告書に社会保険料控除(法第74条第2項第5号に掲げる社会保険料に係るものに限る。)に関する事項を記載する場合にあっては、当該申告書に記載した当該社会保険料の金額を証する書類
所得税基本通達
74・75-1(その年に支払った社会保険料又は小規模企業共済等掛金)
法第74条第1項又は第75条第1項に規定する「支払った金額」については、次による。
(1) 納付期日が到来した社会保険料又は小規模企業共済等掛金(以下74・75-3までにおいてこれらを「社会保険料等」という。)であっても、現実に支払っていないものは含まれない。
(2) 前納した社会保険料等については、次の算式により計算した金額はその年において支払った金額とする。
前納した社会保険料等の総額(前納により割引された場合には、その割引後の金額)×(前納した社会保険料等に係るその年中に到来する納付期日の回数)÷(前納した社会保険料等に係る納付期日の総回数)
(注) 前納した社会保険料等とは、各納付期日が到来するごとに社会保険料等に充当するものとしてあらかじめ納付した金額で、まだ充当されない残額があるうちに年金等の給付事由が生じたなどにより社会保険料等の納付を要しないこととなった場合に当該残額に相当する金額が返還されることとなっているものをいう。
74・75-2(前納した社会保険料等の特例)
前納した社会保険料等のうちその前納の期間が1年以内のもの及び法令に一定期間の社会保険料等を前納することができる旨の規定がある場合における当該規定 に基づき前納したものについては、その前納をした者がその前納した社会保険料等の全額をその支払った年の社会保険料等として確定申告書又は給与所得者の保険料控除申告書に記載した場合には、74・75-1の(2)にかかわらず、その全額をその年において支払った社会保険料等の金額として差し支えない。
なお、この前納した社会保険料等の特例(以下この項において「特例」という。)を適用せずに確定申告書を提出した場合には、その後において更正の請求をするときにおいても、この特例を適用することはできないことに留意する。
地方税法
第34条(所得控除)
第1項 三
前年中に自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料(所得税法第74条第2項に規定する社会保険料(租税特別措置法第41条の7第2項において社会保険料とみなされる金銭の額を含む。)をいう。)を支払った、又は給与から控除される所得割の納税義務者 その支払った、又は給与から控除される金額
第1項 四
前年中に次に掲げる掛金を支払った所得割の納税義務者 その支払った金額の合計額
イ 小規模企業共済法第2条第2項に規定する共済契約(政令で定めるものを除く。)に基づく掛金
ロ 確定拠出年金法第3条第3項第7号の2に規定する企業型年金加入者掛金又は同法第55条第2項第4号に規定する個人型年金加入者掛金
ハ 条例の規定により地方公共団体が精神又は身体に障害のある者に関して実施する共済制度で政令で定めるものに係る契約に基づく掛金
第314条の2(所得控除)
第1項 三 第34条第1項三 と同じ
第1項 四 第34条第1項四 と同じ